2006年07月24日 00:00 〜 00:00
アフタブ・セット・元駐日インド大使「在日外国人のみた小泉政権5年」5

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会見リポート

東アジアの和解と靖国参拝

川西 和夫 (毎日新聞出身)

インド外交官として外務省スポークスマン、駐日インド大使などを歴任し、現在は慶応大学教授。ポジションは違っても、知的でウイットに富む弁舌は健在である。

「小泉首相の靖国神社参拝をどう考えるか」の問いに、神社遊就館に写真が飾られている3人のインド人の紹介から切り出した。日本のアジア主義者に庇護されたラス・ビハリ・ボース、日本軍の後ろ盾でインド国民軍を率いたスバス・チャンドラ・ボース、東京裁判で被告全員無罪を主張したラダビノッド・パル判事である。それぞれどのような思い入れから日印関係の貢献者とされているかを説明し、パル判事については日本軍無罪論でないことを強調した。そして、「彼らの写真が神社に飾られているのと、A級戦犯が合祀されているのは別のことであり、混同してはならない」と述べ、著名なインド人が日本の戦争責任否定や、合祀正当化の論調に利用されている現象に批判的見方を示した。

そのうえで、昨年5月にモスクワで開かれた対独戦勝60周年記念式典などに各国指導者が一堂に会したことに触れ、勝者と敗者が和解する大切さを訴えた。「そのような和解が東アジアでは達成されていない事実を、日本の指導者が靖国参拝をするかどうかの判断の要因にすべきです」と、韓国・中国の指導者や天皇が合同で靖国参拝できない現状を招いている政治に疑問を呈した。

このほか日本の政治家やメディアにはびこっている、中国の脅威に対する牽制を狙ってインドを重視しようという短絡的議論に関しては、冷戦が生み出した封じ込め外交がグローバル社会では時代遅れでしかないと指摘した。中印関係改善の動きにも言及し、「インドも中国も封じ込めるにはあまりに大きすぎます」とユーモアでとどめを刺した。


ゲスト / Guest

  • アフタブ・セット / Aftab Seth

    インド共和国 / Republic of India

    元駐日インド大使 / Former Ambassador to Japan

研究テーマ:在日外国人のみた小泉政権5年

研究会回数:5

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