2006年07月13日 00:00 〜 00:00
グンター・フェアホイゲン・欧州委員会副委員長

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会見リポート

未来への指針作りの難しさ

脇阪 紀行 (朝日新聞論説委員)

もともとはドイツ社民党出身で同国の外務政務次官を務めた。99年に欧州連合(EU)入りし、拡大担当の欧州委員をつとめた後、04年にEUの企業・産業政策担当の副委員長に昇格した。欧州委員の大半を新顔が占める中で、経験豊富な同氏はEUの生き字引的存在だ。

2年前、25カ国体制となったEUはどこまで拡大するのか。東方の巨人ロシアとどう付き合っていくのか。フランス、オランダの国民投票で批准が拒否されたEU憲法はどうなるのか。こんな素朴な質問に、手慣れた調子でこたえていく。

「条約上、EU拡大に限界はない。地理的に欧州にあり、加盟条件を満たせば加盟できる」と言い切ってどきっとさせた。だが、現実の加盟日程に上っているのは07年のブルガリア、ルーマニア、10年ごろのクロアチアまでで、トルコとの交渉には相当の年数がかかるとの冷静な見立てを示した。

イラク戦争当時、ピークを迎えていた米国中心の一極体制は中国、インド、ロシアの台頭によって次第に多極化世界の姿を表しつつある。欧州は、その一極を形成するのが自らの運命だと思い定めているのか。

「ロシアは大事な隣国だ。(米国がいくら批判しても)戦略的な関係を変える必要は毛頭ない」「海賊品の追放のため、日米欧の協力関係を強めよう」といった発言からは、地域統合を着実に進めてきたとの自信がほとばしる。

ただ、EU憲法条約については「憲法はまだ死んでいない。大事なのは、憲法というタイトルではなく、中身だ。08年末までに最終解決策が決まる」と語るだけ。25カ国体制の未来への指針作りの難しさを感じさせられた。

ゲスト / Guest

  • グンター・フェアホイゲン / Günter Verheugen

    欧州委員会副委員長 / Vice President of the European Commission

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