2006年07月28日 00:00 〜 00:00
重村智計・早稲田大学教授「北朝鮮」17

申し込み締め切り

会見リポート

これがミスターXです

中井 良則 (毎日新聞論説委員)

何を考え、どう動くか、予測がつかない北朝鮮。あちこちに張り巡らしたネタ元から意外な事実をいちはやくつかむ。その上で、わかりやすく説明する。大学教授になってからも、この二つの力を兼ね備えた根っからのジャーナリストが重村智計さんだ。

6月に『外交敗北 日朝首脳会談と日米同盟の真実』(講談社)を出版したばかりだ。研究会では、いきなり、本のカバーに使われた2002年9月17日の日朝首脳会談の写真を示して「これがミスターXです」。会談冒頭の写真撮影が終わる時、金正日総書記と並んで座ろうとした人物がいた。それこそが、日本外務省が交渉ルートとして頼ったミスターXだ、という。通訳の隣の席にメモ用紙と鉛筆が置かれているのに、最初はだれも座っていない。写真には写りたくない人物だ。そんな疑問をきっかけに、さまざまな情報を組み立て、「国家安全保衛部第一副部長」と突き止めた経緯を説明した。

世界を驚かせたミサイル発射については「軍部の暴走というより、軍部の意向通り。先軍政治とは事実上のクーデターだ」。小泉首相の評価は「核問題と拉致問題を解決すれば国交正常化交渉ができると(北朝鮮に対し)踏み込んでいれば、歴史的な成果になったかもしれない」。

さらに金総書記の後継者問題では「(金総書記は)自分の死後、自分を否定されないようにしたいはず。金日成もだから息子を後継者にした。だが、後継者問題は棚上げになっている」と語り、集団指導体制への移行という見方を指摘した。

中国と韓国は北朝鮮の現状維持を最優先し、体制崩壊を防ごうとする。米国はレジーム・チェンジ(政権変更)を選択肢から決して除外しない。では日本の対北基本戦略はどこにあるのか。ポスト小泉の難問だ。


ゲスト / Guest

  • 重村智計 / Toshimitsu Shigemura

    早稲田大学教授 / Professor, Waseda University

研究テーマ:北朝鮮

研究会回数:17

ページのTOPへ