2006年02月17日 00:00 〜 00:00
厳善平・桃山学院大学教授「中国経済」8

会見メモ

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会見リポート

改革・開放路線の“影”「四農」

鈴木 美勝 (時事通信編集局総務兼解説委員)

高度経済成長を続ける巨大国家・中国が、四農問題に苦悶の表情を浮かべている。四農問題とは、農業、農村、農民、そして農民工をめぐる四つの問題。安徽省出身の経済学者、厳善平教授は、緻密な人口移動分析、農村の実態調査などを基に、1978年以来進められてきた改革・開放政策の“影”に鋭いメスを入れた。

厳教授によると、近年の中国では、三農問題(「農業の豊作貧乏と食糧生産の不安定」「農民の貧困、特に少数民族農民の絶対的貧困」「農村における公共サービス<医療、教育>の供給不足」)に加えて、「農民工」(内陸農村を中心に沿海地域や都市部に移動し低賃金で働く出稼ぎ者)の問題が深刻化している。

これら四農問題の背景にあるのは、農業搾取、農民差別、農村軽視の開発戦略。特に、低賃金・重労働の下層労働者として「世界の工場・中国」を支える、1億数千万人の農民工問題は、毛沢東時代の歴史的背景、制度的要因に起因しており、胡・温体制下最大の政治問題となりつつある。

改革・開放路線の“影”の部分として、最近、とみに目立ち始めた農民工問題。その本質部分として厳教授が指摘したのは事実上の身分制度である戸籍制度と、就業及び医療・年金などで「二等国民」扱いする差別的行政制度による「都市・農村の二重構造」憲法で移住・職業選択の自由が規定されておらず、全人代の代表選挙の投票で受けている農民の政治的権利制限─の2点。今後、中国が高度成長を持続するには、これら旧来の諸政策を転換させ、四農問題を解決していくことが不可欠、と締めくくった。

最高実力者・と小平が南方視察で、改革・開放の加速化を指示してから14年。経済市場としての魅力に目を奪われがちだったメディアにも、深い実態分析と実証に基づく中国報道が求められる。


ゲスト / Guest

  • 厳善平 / Shanping Yan

    桃山学院大学教授 / Professor, St. Andrew's University

研究テーマ:中国経済

研究会回数:8

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