2006年02月03日 00:00 〜 00:00
永守重信・日本電産社長

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会見リポート

救済型のM&A論

大村 芳徳 (日本経済新聞産業部次長)

1973年、28歳の時に仲間4人と日本電産を立ち上げた。以来、「情熱、熱意、執念」で、売上高5千億円の企業グループを育て上げた。84年に買収した米企業を皮切りに23社を買収してきたM&Aのプロである。その多くは救済型のM&A。「葬儀屋さんもお坊さんも待っているようなつぶれかかった会社に、丁重に頭を低くして、お金をたくさん持っていって、再建をやらせてもらう」方式だ。

再建の方法は「内科療法」。人員削減や事業を切り売りする手法とは一線を画す。従業員の雇用を保証したうえで、労働時間を延ばし、「遅れず、休まず」働いてもらい労務コストを引き下げる。1円以上の出費はすべて社長決裁にして出費を抑え、徹底的に購買コストを引き下げる。社員には整理、整頓、清潔、清掃、作法、しつけを徹底し、業務効率を高める環境を整えていく。

社員の意識を変えながら、永守流経営の考え方を理解してもらえる土壌を整える。事業所を訪れるたびに、社員とお弁当をつつきながらの懇談会を開き、幹部社員は会食に連れ出す。永守氏いうところの「餌付けーション」と「飲みニュケーション」の費用はポケットマネー。「会社のお金でごちそうしてもらってもありがたみがない」からだ。

永守氏が今実現したがっているのが「健全な和製TOB」。会見でも「日本で第一号をやろうと準備していた」と打ち明けた。しかし、ライブドアによるニッポン放送の敵対的買収騒動などで、断念した。

「今はマイナスが70、プラスは30しかない」「悪い例が続き、ここ1、2年チャンスが来るとは思えない」とみる。「和製TOBができれば日本電産も売上高2兆円、3兆円がみえてくる。今は非効率なことをやっている」。小気味よく明快な話の裏に、経営者としての苦悩がすけてみえた。

ゲスト / Guest

  • 永守重信 / Shigenobu Nagamori

    日本 / Japan

    日本電産社長 / NIDEC

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