2005年11月16日 00:00 〜 00:00
清水美和・東京新聞編集委員「中国経済」6

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会見リポート

止まらない所得格差

藤村 幸義 (個人会員(日経出身))

中国ではこの数年、各地で暴動・騒乱などが頻発しており、深刻な社会不安を引き起こしている。その背景にあるのが、拡大する一方の所得格差である。ジニ係数は0・4を上回れば社会の安定を脅かすとされるが、中国ではすでに0・45に達している。清水美和氏によれば、0・5を超えたとの推計もあるという。

特に深刻なのは農村である。最近は開発ブームの中で、生活の糧である農地までも奪われてしまった『失地農民』が多く生まれている。しかも農村には養老年金や医療費などの社会保障がほとんどない。

中国河南省では1990年代からエイズが流行しているが、これも農村の増収対策として地方政府が『売血』を奨励した結果だ、と清水氏は指摘する。800ccの血を提供すれば、40元(約500円)の収入となる。年収200元という貧しい農民にとって、こんなにうまみのある収入源はない。

胡錦濤政権になって所得税の課税最低限額を引き上げるなど、所得格差の是正に着手し始めた。しかしこの程度では効果は薄い、と清水氏の評価は厳しい。なぜなら不動産バブル規制や資産税・相続税の導入、社会保障ファンドの創設など、所得再分配に向けた諸政策は、新富人を代表する勢力の抵抗にあってほとんど失敗しているからだ。

清水氏は「いまや胡錦濤政権への期待は裏切られた」と結論づけている。確かに他の政策でも、『報道の自由化』はかけ声倒れに終わってしまったし、対日外交で打ち出した『新思考外交』も結局、暗礁に乗り上げてしまった。

だが胡錦濤政権は発足してからまだ日が浅い。次の共産党大会(2007年)でどこまで権力基盤を固めるかを見極めてからでも、最後の結論を下すのは遅くないのではないか。

ゲスト / Guest

  • 清水美和 / Yoshikazu Shimizu

    東京新聞編集委員 / Editorial Board, Tokyo Shimbun

研究テーマ:中国経済

研究会回数:6

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