2005年09月30日 00:00 〜 00:00
野口聡一・宇宙飛行士

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会見リポート

地球だけが輝いている

佐藤 年緒 (個人会員(時事出身))

コロンビア号の事故から2年半。スペースシャトル飛行再開の任務を果たして帰還した野口さんの記者会見。あいにくハリケーンの影響でコリンズ船長は同席できなかったが、その分たっぷりと宇宙体験や今後の有人宇宙開発への思いを聞いた。

何と言っても計3回の船外活動での活躍が目立った。人生観は変わったかとの問いに「ハッチから最初に出たあとに、一対一の関係で対した地球は、圧倒的な存在感があった。暗黒の宇宙に地球だけが輝いている。その下にいのちが溢れている。その一つ一つのいのちの営みを守っていかなければと思った」。

本人は「理系人間で数式の方が得意だったので、言葉にするのは難しい」と謙遜するが、豊かな表現力の持ち主である。宇宙ステーションの太陽パネルの上に立った眺めを「大型帆船のマストの上から地球という海を洋々と漂うのを見ているようだ」と比ゆした。

会場からは率直な質問が相次ぐ。「そもそも人間が宇宙に出る意味はあるのか」との問いに丁寧に答えた。「百年前にライト兄弟によって飛行機が誕生した時に、もし日本で飛行機は要らないと言っていたら、今ごろどうなっていたでしょうか」と。

コロンビア事故後、完全にはゼロにはならないリスクを冒しても宇宙に行く意味を考え抜いた。そのうえでのミッション達成。「宇宙開発は教育と同じ、人類の将来への投資だ」との信念に確信を得たのだろう。

シャトル退役と宇宙ステーションの規模縮小を打ち出した米国の動きが気になる最中。野口さんは日本でも50年、100年という長い視野で物事を見る大切さを伝えるとともに、2018年に月面に人を送り込む米国の計画に関心を示し、「できれば参加したい」と意欲をのぞかせた

ゲスト / Guest

  • 野口聡一 / Soichi Noguchi

    日本 / Japan

    宇宙飛行士 / Astronaut

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