2005年07月06日 00:00 〜 00:00
安岡厚子・NPO法人サポートハウス年輪理事長「社会保障(4)介護」2

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会見リポート

改正介護保険法に異議あり  

横田 実 (共同通信内政部)

「介護の社会化」という介護保険の理念はどこへいったのか─。安岡さんは、介護保険が産声を上げてからの5年間を厳しく評価。今回の改正介護保険法は、介護予防の仕組みづくりばかりが脚光を浴び、利用者や家族が不在だったとも述べた。現場を誰よりもよく知っているからこそ、熱のこもった指摘と言える。

少子高齢化が進む日本の状況は、介護が必要な高齢者が増えていく環境にある。改正法は、予防を重視することで要介護者を減らし、保険財政の立て直しと質の向上という一挙両得を狙うわけだが、訪問介護について、安岡さんは調理や掃除といった介護行為ばかりがイメージされるが、メンタルケアに対する評価まで踏み込むべきと表明。その根拠として、閉じこもりの要介護者宅にヘルパーが訪れることで「社会の風が入る」「気持ちが前向きになっていく」という事例を挙げた。

改正で目玉の介護予防導入については、要介護にならない人は「勝ち組」、要介護になった人は「負け組」というような高齢者を差別化することだけはあってはならないと求めた。確かに、介護予防を怠った人の自己責任が問われる可能性がある。だが、障害の人もいるし、認知症の人も好きでなっているわけではない。いくら努力しても認知症などにならない保障はない。同じ予防メニューでも結果が違う場合もある。

やはり高齢者の尊厳を守るような利用者本位の仕組みづくりを目指すべきだ、との指摘に私も賛成だ。  地域の中で独居や高齢者世帯が増え、コミュニティーがなくなっていく時代に、どう介護保険を成功に導くのか。議会や声の大きい団体に引きずられやすい市町村に対し、住民はもっとリーダーシップを発揮するよう働き掛けていくことが必要だと思う。

ゲスト / Guest

  • 安岡厚子 / Atsuko Yasuoka

    NPO法人サポートハウス年輪理事長 / President, NPO-Support House NENRIN

研究テーマ:社会保障(4)介護

研究会回数:2

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