2005年06月22日 00:00 〜 00:00
ツーラ・ハータイネン・フィンランド教育相

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会見リポート

学力調査トップ国の教育理念  

氏岡 真弓 (朝日新聞編集委員)

日本の教育界には「出羽守(でわのかみ)」が多い、とは、ある研究者の弁だ。「英国では全国学力テストをしている」「韓国では小学校で英語を教えている」……。自説の裏付けに他国の政策を紹介するが、施策の理念や状況までは問わない。

経済協力開発機構(OECD)の国際的な学習到達度調査(PISA)でトップの成績をおさめたフィンランドは、学力低下問題に悩む日本で注目され、いま、多くの出羽守を生んでいる。今回の会見は、同国の施策がどんな理念の下に生まれているかを知る格好の機会となった。

教育相が強調したのは、どんな子どもも経済力にかかわらず教育の機会を平等に、という大原則だ。学校教育費は給食費も教材費もすべて無償であり、能力別クラスを一切導入していないことも紹介した。  そして国はカリキュラムの大枠を決めるだけで学校に大きな裁量を与えており、教育の質は教員の質で支えられていること、教師は社会的に尊敬されていることも述べた。翻れば、こうした姿は日本の戦後教育が目指したものだったことに気づく。

興味深いのは、子どもの考えを重視する姿勢だ。例えば、数学を学ぶ意味を考えるプログラムを開発したのは「単純な計算問題を受けたくないという子どもの声があったから」。そして最近力を入れているのは「遊び場や校舎の設計で子どもの意思決定を重視する政策」。そこには未来の主権者を育てる姿勢がある。

そうしたフィンランドの視点から、総合的学習を削減し、習熟度別指導を広げ、格差拡大が懸念されている日本をどう見ますか──。

残念!。教育相の答えは「教育はその国の文化と関連が強いので、とても言えない」だった。

ゲスト / Guest

  • ツーラ・ハータイネン / Tuula Haatainen

    フィンランド / Finland

    フィンランド教育相 / Minister of Education

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