2005年05月20日 00:00 〜 00:00
寺田輝介・前駐韓国大使「北朝鮮」14

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会見リポート

北朝鮮核問題の2層構造  

島田 敏男 (NHK解説委員)

アメリカのテレビ、 新聞が「北朝鮮が核実験の準備加速」と一斉に報じてからちょうど2週間後。クラブゲスト3度目の登板となった寺田氏が、最近の動きの実相をどう見立てるかに関心が集まった。前駐韓大使であるだけでなく、外務報道官、ペルー人質事件の前線担当大使を務めた寺田氏は、表に出る情報の背後を読み解く適任者だ。

この日の結論は「北朝鮮の核問題は、決して手放さない部分と取引に使う部分の2層構造として見る必要がある」という指摘だった。核実験の可能性についても、「偵察衛星に見せるための偽装の可能性がある。後ろ盾の中国が認めないのだから、核実験は外交的ジェスチャーの色彩が強い」と冷静に分析した。

北朝鮮にとっての交渉相手はアメリカで、日本と韓国は援助を取り付ける相手という原則は変わっていない。その一方で、かつて旧ソビエトから原子力技術の指導を受けた時点から、こっそり核兵器の保有を進めていた疑いがある。そう展開した上で、寺田氏は「北朝鮮の核問題は、常に根っこから見ないといけない」と、飛び交う断片情報に耳目を奪われがちな傾向を戒めた。

ご本人は「政府を離れて公開情報の分析に専念しているだけ」と謙遜するが、内外の関連文献を丹念に読み込む誠実な姿勢が伝わってきた。思わず会場の出席者から「北朝鮮専門家といわれる人の中で、誰を信じたらいいのか教えてほしい」という質問が出たほどだ。

外務省を側面から支える(財)フォーリン・プレスセンター理事長という現職ゆえに、慎重な発言が求められているのかもしれない。しかし、次回に登場の際には、さらに踏み込んで、北朝鮮の経済と核問題といった角度からの切り込みも試みていただきたい。

ゲスト / Guest

  • 寺田輝介 / Terusuke Terada

    前駐韓国大使 / Former Ambassador to Republic of Korea

研究テーマ:北朝鮮

研究会回数:14

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