2005年05月25日 00:00 〜 00:00
武部勤・自民党幹事長

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会見リポート

したたかだったか  

中静 敬一郎 (産経新聞論説副委員長)

「相互信頼」。ためらうことなく揮毫した四文字が、いまの心境を映し出しているのだろう。それが、国際政治の場で通用するのかどうか。

会見は、武部氏にとって、間の悪いタイミングだったに違いない。

郵政民営化法案の衆院本会議入りをめぐり、与野党がにらみ合いを続けている真っ最中だった。加えて、小泉純一郎首相の靖国神社参拝に関する自らの発言をいかに説明するか、が求められていた。内容によっては、いずれも新たな波紋を広げかねないだけに慎重に言葉を選んでいた。こんなピンチをいかにしのぐかに器量がみえてくるのではあるが。

民営化法案の仕上げ方は「国会で議論する前にどういう決着にするかは申しあげるべきではない」だった。「うまくいくと思う」と付け加えたあたりは、希望的観測なのか、反対派説得の自信なのか。  関心はやはり、首相の靖国参拝への中国の批判に対し、武部氏が「内政干渉」と反論・撤回したのかどうか、だった。これには「国民の間に内政干渉という声があることを紹介しただけ。内政干渉とは言っていない」としたうえで、「靖国参拝への中国の発言は内政干渉と思っていない」と言い切った。それならなぜ、「内政干渉」を提起したのだろうか。撤回がもつ意味は大きい。  武部氏は日中関係について「不信より信頼、誤解より理解で臨みたい」とも述べた。これが「相互信頼」につながっているのだろうが、強大な隣人になった中国との付き合いには「友好」だけでは律し切れない、より複雑かつ根本的な利害の不一致が生起している。すべての利害損得を考え、国益のために毅然とした姿勢をとる。そんなしたたかな外交の必要性を痛感した会見であった。

ゲスト / Guest

  • 武部勤 / Tsutomu Takebe

    自民党幹事長 / LDP Secretary-General

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