2005年05月17日 00:00 〜 00:00
マハムード・アッバス・パレスチナ自治政府議長

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会見リポート

前議長と対照的な個性

布施 広 (毎日新聞論説委員)

アッバス氏の前任のアラファト議長(故人)とは何度か会見したが、穏やかに終わったためしがない。愚問を発すると説教されるし、批判がましい質問には猛然と反論してくる。だが、アラファト氏の目はいつも笑っていた。来日したアッバス議長の会見に出席して、前議長の茶目っ気たっぷりの叱声を思い出した。

アッバス議長は私のつたない質問にも淡々と実直に答えた。どこか愛嬌のあるアラファト氏とは違って秋霜烈日の雰囲気である。会見をアラビア語で通したのは、議長としての初来日で自分の意思を正確に伝えておきたいと思ったのだろう。2人の個性の差は、パレスチナ問題が大衆運動から密室の政治交渉へと軸足を移している象徴のようにも思えた。

パレスチナ情勢は相変わらず厳しい。イスラエルとの交渉を軌道に乗せるのは容易ではなく、ハマスなどの原理主義組織にどう対処するかという問題もある。まさに内憂外患、難問山積の現状が今後、改善するどころか悪化する恐れもあるのだ。  議長が日本の政治的関与に期待したのは、状況安定への「重石」がほしいからだろう。小泉首相との会談では日本、イスラエル、パレスチナの首脳会談を東京で開く構想も話し合われた。実現性はともかく「仲介は米国の役目」という既成概念を超えた、興味深い構想である。

パレスチナは、和平交渉の閉塞状況に何とか風穴を開けたい。日本としても、経済面だけでなく政治的に貢献したい気持ちがある。ともに平和を願う思いが「東京3首脳会談構想」として形をとったのだろう。近く来日するはずのシャロン・イスラエル首相の対応に注目したい。

ゲスト / Guest

  • マハムード・アッバス / Mahmoud Abbas

    パレスチナ / Palestine

    パレスチナ自治政府議長 / Chairman, Palestinian Interim Self-Government Authority

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