2005年01月14日 00:00 〜 00:00
マレック・ベルカ・ポーランド首相

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会見リポート

民主化運動の先輩

田中 和夫 (NHK解説委員)

1月、ポーランドのベルカ首相が日本を訪れた。絶妙のタイミングだった。昨年暮れ、隣国ウクライナで「オレンジ革命」により親欧米路線を取る野党のユーシェンコ元首相が、新大統領に当選した直後だったからだ。

ベルカ首相は会見で、旧ソ連で2番目の大国ウクライナにEU・NATO入りを目指す政権が誕生したことを「ポーランドの利益に合致する」と高く評価し、「民主的改革につながることを期待する」と述べた。

後輩を応援する先輩の口調に聞こえた。16年前の9月、旧ソ連を盟主とするワルシャワ条約機構の中で、ポーランドは初めて非社会主義政権を誕生させたのだ。私は東欧諸国の民主化の先駆けとなったこの政変劇を取材した後、モスクワへ異動となったため、民主化・市場経済化の過程を直接見ることはできなかったが、どうやら順調のようだ。

現在国民1人当たりの総所得は「大国ロシア」の2倍にもなり、昨年5月にはEUに加盟した。ソ連・ロシア経済の国際的権威・米経済学者ゴールドマンもポーランドの市場経済への転換を成功と評価している。とはいえ、まだまだ経済力不足を痛感している首相の日本訪問の狙いは日本からの経済支援獲得だ。

会見前には、名古屋を訪れ、企業と個別会談をする一方、経団連のフォーラムでも講演を行なって、日本の企業にもっとポーランドへの関心を高めてほしいと呼びかけたという。

会見で「隣国の政治危機解決に協力できたことを誇りに思う」と述べた首相の表情には、民主化運動の先輩としての余裕が感じられたが、経済復興の先輩としても隣国に協力する日が近く来るのではないだろうか。

ゲスト / Guest

  • マレック・ベルカ / Marek Belka

    ポーランド共和国 / The Republic of Poland

    ポーランド首相 / Prime Minister

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