2004年11月08日 00:00 〜 00:00
アブドゥル・イルサン・駐日インドネシア大使

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会見リポート

「SBY」をそつなく売り込み

小池 洋次 (日本経済新聞論説委員)

どんな国でも駐日大使の会見は面白い。それぞれのお国柄がにじみ出るし、何より、その国の地理や歴史を学ぶことができるからだ。時折、はっとさせられることもある。

アブドゥル・イルサン駐日インドネシア大使の場合もそうだった。「島は17000あって、そのうち6000の島に人が住んでいる」。インドネシアは東西の距離が米国並みという大国で、人口では世界最大のイスラム国家だが、島の数でも世界最大なのである。このユニークさは、おそらく、同じ島国に住む日本人にとっても想像の範囲を超えている。

駐日大使の重要な仕事はこうした歴史を含め自国に関する理解を深め、同時に政権とその政策を売り込むことである。ただ、この人の立場はなかなか微妙だ。メガワティ前大統領の時代に任命され、先の大統領選挙で同氏を破ったユドヨノ新大統領に仕える立場だからだ。もっとも、そこは官僚上がりのそつのなさ、前政権を評価しながら、新政権をアピールしてみせた。例えば、新政権の政策を聞かれこう答えたのである。

「基本政策は変わりないが、SBYのほうが、国民の強い支持がある」「メガワティ前大統領はマクロ経済政策で成功した。SBYの場合、ミクロ経済政策の強化が重要になる」。

SBYとは「スシロ・バンバン・ユドヨノ」の略で、こんな略称で語られるのは、存在感の大きさと大衆人気の表れというべきだろう。米国でも、ケネディ元大統領はJFK、シンガポールでは建国の父というべきリー・クアンユー元首相はLKYであった。そういえば、メガワティ氏が略称で呼ばれたとは聞いたことがない。さて、イルサン大使はそこまで考えて、あえて「SBY」という略称を使ってみせたのか。

ゲスト / Guest

  • アブドゥル・イルサン / Abdul IRSAN

    インドネシア / Indonesia

    駐日インドネシア大使 / Ambassador to Japan

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