2004年08月02日 00:00 〜 00:00
河村建夫・文科相

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会見リポート

「人間力」とは

田中 良富 (東京新聞論説委員)

河村建夫文部科学相はスピーチの中で「人間力」という言葉を頻発した。いわく「人間力を養う教育を」。いわく「教員採用試験では人間力を見るように」などなどだ。

「人間力とは基礎、基本がしっかりしており、社会的な体験、人間と人間の触れ合いの中から生まれる」とも説いた。分かったようで、これがなかなか分からない。

語感からすぐに連想するのは、赤瀬川原平さんの著書「老人力」(筑摩書房)だ。老人力があれば当然、「幼児力」「少年力」「青年力」「成年力」もあってしかるべきだ。

そこで、文科相の言う人間力を念頭に置いた教育について、自分なりに具体的な想を練った。

幼児力をつけるには、小さい頃に親の愛情をたっぷり注ぐ。そのためには、家庭教育を充実する。虐待など論外だ。

少年力を養うには、小学校高学年から中、高校生のときに、哲学書や文学書、歴史物などを、どんどん読ませる。学習指導要領に沿って教えていればこと足りる、とするサラリーマン先生ではとても務まらない。

青年力をつけるには大学、院生時代に、専門の学問を、徹底的にきわめさせる。成年力は多分、困難な仕事を通じて得られるものなのだろう。

これらを総称して人間力と言えないだろうか。

「心の教育」にも、何度か言及があった。語感から新鮮な印象を受ける人間力と違って、教育現場では言い古された手あかのついた言葉だ。

先に長崎県佐世保市で発生した小6女児殺害事件を例に出すまでもなく、心の教育は残念ながら、実を結んでいるとは言えない。

文科相は人間力を実の伴わない、手あかのついた言葉にしてはならない。会見は大勢の記者が聴いている。

ゲスト / Guest

  • 河村建夫 / Takeo Kawamura

    日本 / Japan

    文科相 / Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT)

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