2004年05月13日 00:00 〜 00:00
猪口邦子・前軍縮会議代表部大使

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会見リポート

「排除」のない世界政治を

百瀬 和元 (個人会員(朝日新聞出身))

軍縮、不拡散、人道支援。この3つを日本外交の柱にすえたい。こう考える猪口さんが今年四月までの2年間、軍縮大使として体験した「外交の現場」を語った。

テロに利用される恐れなどで大量破壊兵器がもっぱら注目を集めている。しかし「同じように重要なのが年間50万人の犠牲を出している小型武器だ」とまず指摘した。世界中に6億丁が出回っている自動小銃やピストルの問題だ。

多くの国々で深刻な社会問題になっている。しかし日本での関心は低い。小型武器問題を例に、「世界と日本の認識にはかなり隔たりがある」といい、世界各国の事情をきちんと理解して国際社会の課題に取り組んでいく姿勢が現在の日本には重要だと強調した。

同じ発想から、すべての国を含む形での「多国間主義」がきわめて重要になっていることを力説した。誰もが「取り残された」「除外された」などと感じないプロセスが世界の平和や安定のために不可欠だと論じた。

質問に答えて、猪口さんは世界の平和と安定を担う国連安保理についても触れた。「軍事的な貢献もできる」といった論理で日本は常任理事国入りをめざすべきでない。一部の国や人々が「排除された」などと思わない世界政治のプロセスを推し進め、「世界全体のために行動する日本」を打ち出していくべきだ、と。

雄弁な語り口に、外交の現場で磨きのかかった研究者の理論を感じた。こうした民間大使の体験が今後の日本外交にどう反映されていくのか。見守っていきたい。

ゲスト / Guest

  • 猪口邦子 / Kuniko Inoguchi

    前軍縮会議代表部大使 / Former Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary to the Conference on Disarmament

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