2004年03月10日 00:00 〜 00:00
久保知行・住友信託銀行年金研究センター主席研究員「年金改革」2

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会見リポート

国民共通の基礎年金を基本に

山口 聡 (日本経済新聞編集委員)

2004年は5年に一度の年金制度改革の年。2002年から改革案の検討を始めていた政府はこの2月、法案をまとめて国会に提出した。改革論議に歩調を合わせて年金に関する報道も急増。久保氏はこれら報道にホームページ上などで歯に衣着せぬ論評を加えている。厳しい指摘を覚悟のうえで拝聴した。

久保氏が最も強調したのは「全国民共通の基礎年金を基本に考えるべき」という点。共通の年金のはずなのに、会社員は収入比例で保険料を払い、自営業者らは毎月定額(1万3300円)の保険料を払う。定額制は低所得者に厳しい。実際、自営業者らは4割近くが払っておらず、制度は破たんの危機にある。全員が所得比例で保険料を払うようにすることこそ制度安定への道という主張だった。

年金改革に関するマスコミ報道は厚生年金を基本に据えてきた。役所の公表の仕方がそうであったこともあり、給付額も保険料負担のあり方も厚生年金でまず示した。工夫の余地がありそうだ。

年金財源に消費税を充てるとの考えにも久保氏は反対した。貯蓄・資産部分には課税されないので「金持ち優遇になる」という理由。政府・与党やマスコミにもある「消費税を上げればなんとかなる」との安易な期待への警鐘だ。

年金制度は複雑。「基礎年金」と「国民年金」の関係を解説するだけでも苦労する。久保氏の主張も理解したうえで、改革のあり方をわかりやすく報道するのがマスコミの使命だが、その難しさもあらためて感じた研究会だった。

ゲスト / Guest

  • 久保知行 / Tomoyuki Kubo

    住友信託銀行年金研究センター主席研究員 / Chief ReseachdResearch Center for Pension, The Sumitomo Trust and Banking

研究テーマ:年金改革

研究会回数:2

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