2004年02月25日 00:00 〜 00:00
ラクダール・ブラヒミ・国連事務総長特別顧問

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会見リポート

誠実な国連のいぶし銀

後藤 康浩 (日本経済新聞編集委員兼論説委員)

ハイチ、アフガニスタン、そしてイラク。問題をはらんだ国、地域と正面から向き合ってきた経験の深い外交官らしい多くの重い言葉を会見で聞くことができた。

「アフガンを忘れないで」。今年1月まで勤務したカブールでは多くの国民にこう言われたそうだ。89年のソ連軍撤退後、世界がアフガンへの関心を失った結果、アフガンでは麻薬栽培が主力産業となってしまい、隣国パキスタンに三、四百万人、イランに150万人の麻薬中毒患者を生んだ。今や欧州で販売される麻薬の90%をアフガン産が占める、という。

アフガンを忘れた代償を世界は9・11テロでも払ったわけだが、それ以上に様々な影響が我々の日常生活に忍び寄っている。「グローバリゼーションはコカコーラとトヨタを売ることだけではない」という言葉には経験に裏打ちされた痛切な響きがあった。

2月に現状のイラクで直接選挙が可能かを調べるため調査チームを率いて現地入り。シーア派、スンニ派など400~600人のイラク人から意見を聞いた、という。6月末のイラク人への権限移譲までには直接選挙は不可能という報告書を国連に提出した。直接選挙を強く主張していたシーア派にとっては不利な内容だが、この報告書にはシーア派も納得し、各勢力の足並みがそろい始めたのはまさにブラヒミ氏の誠実さ、公平さによるところが大きいだろう。

アラブ人として米軍拘束後のフセイン元大統領の取り扱いへの感想を問われ、「好ましいものではなかった」と率直に指摘。さらに「アラブ人はパレスチナで起きていることにより関心があり、世界が不当に沈黙していると感じている」との見方を紹介した。

「日本はアフガンへの支援を地道に続けてくれた」と感謝を表したが、これは今後の日本の国連活動への期待でもあっただろう。

ゲスト / Guest

  • ラクダール・ブラヒミ / Lakhdar Brahimi

    国連事務総長特別顧問 / Special Advisor to UN Secretary-General

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