2003年09月29日 00:00 〜 00:00
カール・ビルト・米国ランド研究所理事「米外交の行方」4

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会見リポート

パレスチナ問題がカギ

澤 英武 (個人会員(産経新聞出身))

外交・安全保障問題に取り組んでいるカール・ビルト氏(元スウェーデン首相)を迎えての研究会は米国と欧州の関係がぎくしゃくしている折だけに、示唆に富むものだった。スピーチとその後の質疑を通じての同氏の意見を要約すると。

一、冷戦時代、ソ連の脅威に対抗して、米欧の関係は緊密だった。ソ連解体以後、米欧関係は新たな段階に入ったが、アメリカと欧州は共通のビジョンが打ち立てられないでいる。米国はNATOの中東への拡大をためらわない。しかし欧州はNATOの新たな役割を、戦争同盟から平和維持活動による平和構築に移行させたいと望んでいる。

二、アフリカ事態などで、米国抜きの欧州独自の活動を考えるべき時を迎えている。米国単独主義では不十分である。実行力を伴う効果的多極主義の道が望ましい。

三、イラクの戦後復興はこの地域安定とエネルギー問題で重要だが、パレスチナ紛争の解決はそれ以上に重要だ。パレスチナが解決しなければイラク復興も成功しない。優先順位を正しく把握すべきだ。

ビルト氏は、パレスチナ問題解決なくしてイラク問題を含む中東和平の根本的解決は難しい、欧州の立場はアメリカと異なる、と述べ、言外にカギは米政権がイスラエル寄り政策を改めることにあると、示唆した。

九一年から三年間、スウェーデン首相を務め、現在まだ五十四歳の若さ。政界復帰の意思を問われ、「同じことは二度やらないのがわが人生の原則」と答えた。

ゲスト / Guest

  • カール・ビルト / Carl Bildt

    スウェーデン / Sweden

    米国ランド研究所理事 / President, RAND Corporation

研究テーマ:米外交の行方

研究会回数:0

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