2013年03月22日 13:00 〜 14:30 10階ホール
米軍事司法制度について 在日米軍法務部長に聞く

会見メモ

在日米軍部・第5空軍司令部のシュルーズベリー法務部長が米軍司法制度の統一軍法典(UCMJ)や司法外懲罰規則(NJP)などを説明し、最近の米軍構成員による懲罰例についても紹介した。自分の役割で重要なものは、軍事司法制度について司令官にアドバイスをしたり、日米合同委員会の米軍法務代表を務めることである。UCMJは犯罪を裁くいろいろなツールを盛り込んだ優れたものであり、60年にもわたり機能している。これにより、軍構成員の規律がたもたれている、とした。最大の利点は、軍とともにどこにでも移動できることで、戦場での運用も可能にし、裁判の効率化に寄与していると強調した。

日米地位協定の改定についての質問には、(他の国との協定でも)米軍構成員の民事上、刑事上の免責を見直そうという傾向が最近出てきているとしながらも、改定自体は難しいものになる、との認識を示した。

司会 日本記者クラブ企画委員 杉田弘毅(共同通信)

通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)

日本記者クラブホームページ

http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/03/r00025529/

在日米軍司令部ホームページ

http://www.usfj.mil/


会見リポート

隙を見せない「ミスター軍法」

田上 幹夫 (朝日新聞出身)

およそ組織の法務担当者たるもの、ワキが甘くては務まらない。訴訟社会の米国、それも在日米軍の法務責任者となればガードの堅さは格別であろう。

そう、シュルーズベリー部長が隙を見せることはなかった。米軍は建国以来、練り上げた軍事司法制度を持ち、個別案件を別にすれば、在日米軍の取り扱い等を定める日米地位協定もうまく機能しているという。

個別案件といえば、沖縄で起きた昨年10月の米兵集団強姦事件がまだ記憶に新しい。米軍は日本の優先的な捜査権行使を認めた。加えて、勤務時間外の行動指針(リバティーポリシー)を厳しくし、深夜の外出を禁じるなど再発防止に努めた。緊迫の度を加える東アジア情勢の中で、たしかに米側の対応は早かった。

しかし、問題は、地位協定によって米兵が必要以上に守られ、懲りずに悪さをしでかす現実にある。それが日本人、とりわけ沖縄県民の多数の常識だが、「ミスター軍法」たる部長は、協定は今のままでよし。運用の改善で十分、と揺るがない。

彼にそう思わせるのは、米軍問題を扱う日米合同委員会の日本側スタッフが軟弱なせいなのか。「あなたは日本の委員がタフ・ネゴシエーター(手ごわい交渉相手)だと思いますか」。そんな変化球の質問に、部長は笑顔を交えて、彼らは賞賛に値する、と受け流した。やはり、我が方の委員はタフではなさそうだ。

日本より有利、とされるのが独、伊の地位協定だが、「国ごとに事情があり、内容は異なる。比べることはしない」と軽くいなした。

米大統領でも、おいそれとは手がつけられぬ軍法や協定の改正を一部長に正面から問うのは難しい。しかし、何がしかのニュアンスをくみ取ることはできる。あってほしくはないが、次に米軍の事件が起きたら再登場願おう。

壁を少しだけ崩せる予感がする。


ゲスト / Guest

  • スティーブン・シュルーズベリー / STEPHEN M. SHREWSBURY

    アメリカ / USA

    在日米軍司令部・第5空軍司令部法務部長(大佐) / Staff Judge Advocate for U.S. Forces - Japan and Headquarters, Fifth Air Force, Yokota Air Base, Japan

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