2012年07月12日 14:00 〜 15:30 宴会場(9階)
「クメール・ルージュ裁判」野口元郎・判事

会見メモ

クメール・ルージュ裁判(カンボジア国際法廷)の最高審判事を7月15日付で辞任する野口元郎氏(現・法務省法務総合研究所国際協力部長)が、「クメール・ルージュ裁判の成果と今後――国際判事辞任にあたって」と題して話し。記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員会 山岡邦彦(読売新聞)

■関連資料ダウンロードサイト

控訴審判決全文:英語

http://www.eccc.gov.kh/en/document/court/case-001-appeal-judgement

控訴審判決サマリー:英語

http://www.eccc.gov.kh/en/document/court/summary-supreme-court-chamber-appeal-judgement-case-001

控訴審判決を報じる法廷号外

http://www.eccc.gov.kh/en/publication/court-report-special-edition-case-001-final-judgement

法整備支援パンフレット:WEB版

http://www.moj.go.jp/housouken/houso_icd.html

日本記者クラブのページ

http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2012/07/r00024551/


会見リポート

裁判通して若い世代に伝える意義

友田 錫 (産経新聞出身)

1970年代後半の4年間、カンボジアのポル・ポト派支配時代に繰り広げられた170万人とも200万人ともいわれる国民の大量殺戮。その世紀の残虐行為を裁くクメール・ルージュ裁判がはじまってから、6年たった。いま、裁判はどこまで進んでいるのか。


裁判開始以来、最高審判部の国際判事のひとりとして参画してきた野口元郎氏が、断片的に報じられてきた進行状況を、かなり筋道立って説明してくれた。結論からいうと、裁判はよくいえば道半ば、悪くいえば先行き不透明の状況にあるらしい。


これまで進行中の裁判は、1万2千人以上が処刑されたツオルスレン政治犯収容所(正式名S21)の所長、カン・ゲク・イウ(通称ドイッチ)を裁く第一事案と、病死したポル・ポトを除いたヌオン・チア、イエン・サリ、その妻イエン・シリト、キュー・サムファンら最高級指導者4人を対象とする第二事案との二つから成っている。だが結審したのは第一事案だけ。肝心の最高指導者らの裁判は「被告の高齢化と資金難から時間との闘い」だという。


このほか、実際に虐殺に関わった何千人もの中、下級幹部を対象に、第三事案、第四事案の裁判も予定されている。だが、フン・セン首相やカンボジア側検察官らの反対で、開始そのものがほぼ絶望的らしい。背景には、この裁判をめぐる複雑な内外の政治状況がある、と筆者はみる。


では、クメール・ルージュ裁判はカンボジアに何をもたらしたのか。


「クメール・ルージュ問題を知らないカンボジアの若い世代は、裁判のおかげでこの問題を知り、語り合うようになった。国の未来にとって意義は大きい」と野口氏は指摘する。


野口氏は「裁判の予想以上の長期化」を理由にこの7月、国際判事を辞任した。いま、法務省総合研究所の国際協力部長として、司法分野での途上国支援に意欲を燃やしている。



ゲスト / Guest

  • 野口元郎

    クメール・ルージュ裁判(カンボジア国際法廷)最高審判事

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