2012年01月20日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「2012年経済見通し」「日本経済」岩田一政 日本経済研究センター理事長

会見メモ

岩田一政・日本経済研究センター理事長が研究会「2012年経済見通し」で、ユーロ危機と原発事故にともなう日本のエネルギー・パスを中心に話し、質問に答えた。


2012年度の日本の実質経済成長率を2%程度と見込んだ上で、ユーロ危機による下ぶれリスク(1%)への警戒を示した。ユーロについて「生存をかけた危機」と表現し、ギリシャが3月末にデフォルトと認定される恐れやフランスの4月大統領選挙などから、4月がユーロにとって「最も悲惨な月」になる懸念を表明した。

日本の円高について、2007年第二四半期から2011年第三四半期にかけて円の実効為替レートが名目34%増価したと分析し、円高対策と主要通貨のクラッシュ回避を兼ねて「円で外貨建て資産購入を可能とする金融危機予防基金(50兆円)」の創設を提唱した。

原発事故の発生確率について、CDS市場の価格情報を見ると、1基当たり4~5%で、20年~25年に一回事故が起こる確率と指摘した。過去の事故実績から計算すると、日本では10年に1回事故が起こるという。さらに、除染費用、損害賠償、保険料、電源立地対策費などを含めると、原発の発電コストが20円/kWhを超えるとの試算を示した。今後の原発のシナリオとして①再稼働せず2012年初めにすべて停止②耐用年数40年と新規建設ゼロで2050年に脱原発③ドイツ型対応で①と②の中間④アメリカ型対応で新規建設の一時停止⑤原発を現状で継続—の5種類をあげて説明した。


司会 小此木 潔(日本記者クラブ企画委員・朝日新聞)

岩田氏が講演で使用した資料
http://www.jnpc.or.jp/files/2012/01/b52ad9acaf80eb89b014264657f0094c.pdf

日本経済研究センターのホームページ(岩田氏がブログを掲載している)

http://www.jcer.or.jp/index.html


2011年1月28日経済見通し 岩田一政氏 日本記者クラブのページ

http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2011/01/r00015849/


会見リポート

ユーロ危機波及でクレジットクランチの懸念も

矢田 義一 (朝日新聞WEBRONZA編集長)

2012年経済の最大の不安定要素は、深刻の度合いを深めている欧州の債務危機、信用不安であることは論を待たない。岩田一政理事長は「ユーロの生存をかけた危機」として、その実相と処方箋を詳述した。ギリシャのデフォルトのリスクは「かなりある」との見立てで、当面は3月20日の債務借り換え期限がひとつの山場と指摘した。ユーロが1年間で15%以上下げる「通貨クラッシュ」についても「あるのではと思っている」と述べた。


ユーロの危機をめぐっては、財政資金と銀行部門の資金需要をまかなう算段がついておらず、ユーロ圏の危機が波及し、世界的なデレバリッジによるクレジットクランチが懸念されると説明。当面の処方箋として、金融安定化基金を2兆ユーロ規模に積み上げる抜本的拡充、ユーロ共同債券の発行などを提起。財政同盟が成立するまでは金融面での工夫が必要だと強調した。


日本経済については、実質経済成長率は2%程度、名目は1%近傍と予測。ユーロ危機の進化による1%程度の下ぶれリスクに触れた。また、円高が持続しデフレ脱却は実現しないとし、2012年度の消費者物価はマイナス0・5%と予測する。円高対策として、金融政策でサポートされた介入政策、金融機関・企業による円での外貨建て資産購入が有効だと語り、円での多様な外貨建て資産購入を可能とする金融危機予防基金(50兆円)の創設なども提言した。



ゲスト / Guest

  • 岩田一政 / Kazumasa IWATA

    日本 / Japan

    日本経済研究センター理事長 / President, Japan Center for Economic Research

研究テーマ:2012年経済見通し

研究会回数:0

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