会見リポート
2011年12月01日
14:00 〜 15:30
10階ホール
研究会「世界の新聞・メディア」⑯ 石川幸憲 在米ジャーナリスト
会見メモ
『ワシントン・ポストはなぜ危機を乗り越えたのか バフェット流経営術の真髄』 石川幸憲 著(毎日新聞社)
http://books.mainichi.co.jp/2011/09/post-9398.html
司会 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)
2010.3.15研究会「世界の新聞・メディア」⑤のページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2010/03/r00015054/
会見リポート
米新聞 生き残りかけた長期的戦略
山口 恭司 (北海道新聞メディア委員・東京駐在)
廃刊やリストラが相次ぎ、厳しい経営環境にさらされる米国の新聞業界。石川氏が講演で示した米調査機関のデータがその深刻さを物語る。
新聞がなくとも情報を得られるとする人は約7割。新聞を情報源にしている人は40歳以上で44%だが、18~39歳では23%に半減する。「米国の新聞社は今、インターネット出現以降の若い世代と、新聞に慣れ親しんできた60~70代のどちらに重点を置くべきかを迫られている」と強調した。
生き残りをかけた各社の戦略は各様だが、石川氏は二つの潮流を指摘した。一つは、新聞をレガシー産業と位置づけ、紙媒体で可能な限り収益を上げようという流れ。もう一つは次世代のメディアの形を模索する、「ある意味、まじめなアプローチ」だ。後者の中で、事業の多角化で荒波を乗り切ろうという老舗新聞社を取材し、昨秋、『ワシントン・ポストはなぜ危機を乗り越えたのか』(毎日新聞社)を著した。
同社は経営の安定化を目指して企業買収を進め、現在は持ち株会社の下に教育、新聞、テレビ局、CATVなどを有する企業グループに成長。総収入の6割を占める教育事業部門が、電子媒体を含む新聞事業の赤字を埋める構造という。
まったくの異業種に手を出す経営に違和感を覚えなくもない。ワシントン・ポスト自体、浮沈を繰り返し、この手法が最良とも限らない。ただ、著書で指摘されている、編集幹部に求められる戦略的決断力、有望な若手社員の起用、読者優先の原点回帰─といった点は傾聴に値する。
ワシントン・ポストの経営から得られる教訓は何か。「一つは長期的視点を持つこと」と石川氏は述べた。新たなビジネスモデルの確立には、揺るぎない戦略と不断の試行錯誤を可能にする体力が不可欠とあらためて感じた。
ゲスト / Guest
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石川幸憲 / Yukinori ISHIKAWA
在米ジャーナリスト / Journalist in the U.S.
研究テーマ:世界の新聞・メディア
研究会回数:0