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廃炉目標、実現可能か疑問(中川 琳 静岡新聞社社会部)2023年3月

東京電力福島第一原発

 水素爆発で骨組みがむき出しになった福島第1原発1号機。事故から12年、構内は線量が下がり、建屋から70㍍ほどまでも防護服なしで近づけるようになった。

 廃炉へ前進しているようにも見えたが、東電が「最大の課題」とする燃料デブリは、具体的な取り出し方法すら決まっていない。1~3号機で計880トンと推計するも「実際の量は分からない」(東電)。実験的に取り出しながら適切な方法を検討するという。「30~40年での完了」との目標は実現可能なのか疑問が残る。

 取り出したデブリや廃棄物の最終処分も関係者との協議はこれから。原発が立地する大熊町は2019年に面積の4割で避難指示が解除されたが、人口は事故前のわずか4%。地域の復興と再生を含めて廃炉なのではないか。

 国は原発回帰へとかじを切った。先が見通せない廃炉と周辺市町の状況を目の当たりにし、国全体での議論があまりにも不足している中での判断だと感じざるを得ない。

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