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東京電力福島第一原発取材団/デブリ「耳かき1杯」の難題(織田 龍郎 愛媛新聞社編集局報道部)2021年12月

 2011年3月11日、大学卒業を控える中、都内で東日本大震災を経験した。揺れの恐怖や社会の混乱は今も鮮明に記憶する。一方で、東京電力福島第一原発の事故で、建屋が水素爆発する映像は「どこか遠い場所の出来事」のように映っていた。

 4月から原子力防災を担当している。愛媛県には、四国電力伊方原発が立地する。事故からの復興と廃炉の進捗を見ることができるチャンスだと思い参加した。

 高台から見下ろした1~4号機、多核種除去設備(ALPS)で浄化された処理水が入るタンク群。「そびえる」存在感に、まさに圧倒された。視察の中で最も印象に残ったのは、2号機内部のデブリの取り出しが来春にも始まることについて。巨大な建屋から取り出す量は「耳かき1杯程度」という。核物質を扱う難しさを目の当たりにした。

 管理区域内への入域では苦い失敗をした。代表撮影を兼ねており、機材入りのバッグを持ち込む予定だったが、金属探知機に引っかかった。原因は、バッグの底に残っていた菓子の包み紙。冷たい視線に顔を赤くしたが、核物質防護の厳重さを垣間見た気がした。

 10年半が経過した今なお、事故は続いていると痛感した。くしくも、地球温暖化の影響でエネルギー政策が転換点を迎えている今、福島事故の反省も踏まえ、「我がこと」として議論を深めるよう問い続けなければならないとの思いを新たにした。

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