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庭園都市・バンガロールの変化(山陽新聞 岡崎伸二)2005年3月

都市部には自動車があふれ、こぎれいなスーツを身にまとい、携帯電話で連絡を取り合うビジネスマンの姿が目についた。傍らには農村部で食い詰めた人たちが出てきてつくったスラムがある。深夜まで物ごいを続ける幼い子どもたちもいる。

 

農村部には水道や電気がないところが多い。不衛生なため池で体を洗い洗濯をする。一日中、共同井戸から水を運び続ける女性もいた。

 

カースト(身分制度)も厳然として残る。日系企業は「採用で差別はしない」というが、技能テストをして有能ならリーダーに取り立てる制度も設けても、好成績を残した低いカーストの従業員が、「あとでいじめられるから」と、リーダーへの就任を断ったという話もあるそうだ。

 

ITの聖地といわれるバンガロールでは、新富裕層が住む郊外に、シネマコンプレックスとブランドショップが入った大型の複合ビルが建ち、民族衣装のサリーでなく、ジーパン姿の女性が映画やショッピングを楽しんでいた。

 

その一方、かつて「庭園都市」と呼ばれ静かで美しかったこの町の様子は一変した。500万人近くにまで人口は膨れあがり、朝夕の通勤ラッシュは、日系企業の駐在員の頭を悩ませる。中心部の交差点では、ガスマスクをつけた警察官が交通整理に当たっていた。

 

学生の時以来、25年ぶりに訪れたインドは、富裕層を拡大させながら経済大国入りを目指し、成長を加速させていた。

 

しかし、貧富の格差の拡大や、人口増を背景にした都市の過密問題は深刻さを増しており、解決しなければならない課題もより大きくなっているように見えた。

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