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第13回(ドイツ・イスラエル)戦後和解(2015年7月) の記事一覧に戻る

〝奇跡〟のベストフレンド(天日 隆彦)2015年7月

強制収容所の生存者で、イスラエルの主席ラビを務めたラウ師が、テルアビブのオフィスで「誰が許せと言うのか」と、厳しい口調で語ったのが印象に残っている。今もドイツでの宿泊は拒み続けているという。ただし、個人の感情と国家間関係は別の問題で、ドイツはベストフレンドだとも述べた。

 

国交樹立50年を迎えた両国は、「奇跡」と呼ばれるほど良好な関係にある。イスラエルの若者にとって、活気あふれるベルリンは人気の街で、移り住む人も多いという。ドイツ連邦議会のロート副議長は「歴史と向き合うことがドイツを強くする」と述べ、補償をはじめとするさまざまな取り組みが重要だったと強調した。

 

米国の国際政治学者、ジョセフ・ナイは、「信頼性が主要なパワーの源泉になるにつれて、ソフトパワーが以前より重要になりつつある」と述べている。特殊なナチ犯罪への深い反省を示すベルリン市内の数々の施設を訪ね、そのことをあらためて考えさせられた。

 

(読売新聞論説委員)

 

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