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スウェーデン:原子力政策で先駆的な取り組み(共同団長:服部 尚)2015年2月

 

高レベル放射性廃棄物の処分地を確保していることで知られるスウェーデン。原子力安全から廃棄物処分研究まで駆け足で現場を巡った。

 

成田から12時間、飛行機に乗ってコペンハーゲンに着いたのが夕方。さらに電車を乗り継ぎ原発や廃棄物研究所があるオスカーシャムにたどり着いたのは深夜だった。翌朝からみっちり取材が続き、翌々日はバスで120㌔離れた処分地のあるフォルスマルクに向かい、午後にはストックホルムからアイスランドに向かうといった、日本記者クラブらしい弾丸取材となった。

 

スウェーデンといえば、社会福祉や男女平等が進んでいることで知られる。原子力の分野では、小泉元首相が訪れたフィンランドとともに、各国が苦労している高レベル廃棄物処分地を確保していることが何かと関心を集める。しかし、現地を見てあらためて印象的だったのは、高レベル廃棄物にとどまらず、原子力全般で先駆的な取り組みをしていることだった。

 

日本では福島第一原発事故を受けてようやく着手された過酷事故対策に、かなり前から取り組んでいた。放射性廃棄物処分場では、日本では処分先はまだ決まっていない研究用や医療用の放射性廃棄物も受け入れていた。各原発の使用済み燃料を集中管理する貯蔵施設もつくられていた。チェルノブイリ原発事故で汚染された経験が、原子力分野での取り組みを加速させたのだろう。

 

同国では10基の原発が稼働中で電力の4割を賄うが、いずれ原発はなくなる方向にあるという。2029年から高レベル放射性廃棄物の処分場が稼働すれば、当面は後始末の人材をどう確保していくかが課題だという。原発を使ったことによる苦労は続く。日本の今後をあらためて思った。

 

(はっとり・ひさし 企画委員・朝日新聞大阪本社編集委員)

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