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震災後を生きる証 記録する使命(共同通信社 山内大輝)2012年3月

 

東日本大震災発生から1週間後の3月19日、仙台市内に入った。中心地を少し離れると津波の痕跡が生々しく広がる。農具も畑もすべて失い絶望する農家の男性や、行方不明者の名前を叫びながらがれきの中を探し歩くお年寄り。遺族の言葉にならない声が響く遺体安置所。直視できない被災地の現実があった。

 

初めはそんな状況に置かれた人たちとどう向き合い、取材すればいいか戸惑った。取材することでつらい記憶を掘り起こし、傷を深くしないだろうか。写真を撮るのをためらう時もあった。しかし、被災した人たちと交流を重ねるたびに、この人たちのことを撮影し伝えるべきだと強く思うようになる。彼らの強く生きる姿に突き動かされた気がした。被災地で出会う人たちの証言や体験談を拾い上げ、そしてその人たちが震災後を生きた証を写真として記録する。それが自分の役目だと考えるようになった。

 

あれから1年がたつ。今でも困難な生活を送る人たちは「忘れられてしまうことが怖い」と口々に話す。「3・11」の記録を風化させないためにも、これから最も長く震災報道に関わっていく立場として責任を持って被災地の状況を伝えていきたい。

 

(やまうち・ひろき 大阪支社写真映像部/2010年入社)

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