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私の8月15日 耳に残る大西中将の訓示(小島 章伸)2015年8月

広島原爆のキノコ雲を望見した衝撃から旬日を経ずして迎えた敗戦。そのとき私は、海軍兵学校生徒(第76期、二号生徒)として江田島本校在学中だった。正午、天皇陛下の玉音放送。次いで1300(ヒトサンマルマル=午後1時)、75~77期の生徒総員が校庭に集合し、大西新蔵海軍中将(副校長兼本校監事長)の訓示を聴く。

 

ドイツの哲学者フィヒテの有名な敗戦演説「ドイツ国民に告ぐ」を紹介しつつ、「日本は無条件降伏することとなった。残念、無念だが、いたずらにめそめそ泣いている時ではない。日本という大文化国家は絶対に亡びない。諸子は日本の復興を双肩に担うべき人たちである。学に進め!」と嗚咽する生徒を鼓舞された。凛としたその声は、今なお強く耳に残る。挫折からのスタート。私の戦後人生の原点である。

 

(日本経済新聞出身 87歳)

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