2024年02月28日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「能登半島地震」(8) 森本章倫・早稲田大学教授

会見メモ

都市計画、交通計画を専門とする早稲田大学教授の森本章倫さんが、「人口減少社会の都市防災の課題と展望」をテーマに登壇。都市計画の基本、能登半島地震の復旧・復興に向け考えるべき視点などについて話した。

森本さんは日本都市計画学会会長、日本交通政策研究会常務理事、防災学術連携体代表幹事なども務める。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

「先読み」と「調整」が大切

迫田 朋子 (企画委員 NHK出身)

 日本都市計画学会会長でもある森本章倫氏は、関東大震災の復興の話から語りだした。都市計画の基本は、良い社会の形成に向けた「先読みと調整の技法」だという。よりよい社会をつくりたいという未来に対する思いの共有と、それに向けた時間、空間、ひとの調整。能登半島地震の今後の復興に向けてすぐにでも取り組まなくてはならない。

 東日本大震災からの教訓として、ボトムアップとトップダウンのバランスという視点をあげた。被災直後の緊急対策はトップダウンだが、将来の復興計画は地域の問題であるためボトムアップであることが求められる。重要物流道路などの整備は国の役割だがまちづくりの主体は地域に暮らすひとたちだからだ。

 被災地の住民・事業者の声を聞く、といっても、被災者の思いも多様だ。安全なところに移りたい、もとのところに戻りたい。時間がたてば考えも変わる。国や市町村は、都合のいい声、大きい声だけをきいて、声なき声は届かないといった事態も起きる。甚大な災害を目の前にすると当事者にとって「先読み」は難しい。

 高齢化率が50%という超高齢社会の先進地でもある能登の復興は、東日本大震災のように10年がかりというのでは長すぎる、かといって急ぎ過ぎると「調整」を怠って被災者を置き去りにしてしまうおそれもある。森本氏は“アジャイル”という用語を使い、計画をスピーディーに現実に合わせて変更する臨機応変な対応力が重要だと指摘した。一度動き出したら止められないといった事態が起こりうるのは東日本大震災の反省でもある。

 農業や漁業といった集約することが難しい生業や伝統産業など生活再建といっても多様だ。住民の思いを受け止めながら多様性を担保し“街の復興”だけでなく“人の復興”のために限られた資源をどう配分するか、まさに森本氏が語る「先読みと調整の技法」が求められる。


ゲスト / Guest

  • 森本章倫 / Akinori MORIMOTO

    早稲田大学教授 / Professor, Waseda University

研究テーマ:能登半島地震

研究会回数:8

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