2024年02月08日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「能登半島地震」(6) 室﨑益輝・神戸大学名誉教授

会見メモ

能登半島地震の発災から1カ月超がたった。

室﨑益輝・神戸大学名誉教授が、「前例のない災害に前例のない対応を」をテーマに登壇。

復興に向けて必要な視点、減災社会の構築に向け何が必要になっているのかなどについて話した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

「行くな」は被災地の見殺し

奥山 智己 (毎日新聞社くらし科学環境部副部長)

 半世紀余りにわたって防災や復興の研究に力を尽くしてきた室﨑さんは、石川県の災害危機管理アドバイザーを務めるなど能登半島との関わりも深かったという。それだけに、今回の地震を振り返るにあたって「被害が大きくなり、県の被害想定のあり方などが問われることになる。その責任の大半は私にあるので、自らのあり方を問うような話(記者会見)になる」と切り出した。

 その会見の中では、いくつもの示唆に富む提言があった。

 特にボランティアの活動については「SNSでは『行くな、行くな』の大合唱。被災地を見殺しにすることに気づいていない」と指摘。川に溺れている子どもに例えて「コロナがうつるから手を差し伸べないのは、ボランティアに『来るな』と言っているのと一緒。手袋をはめれば感染せずに助けられる」と語り、その「手袋」を見つけた上で地震直後から活動すべきだと訴えた。

 具体的には、ボランティアは「支援したい」という思いだけではなく、安全対策など自己完結できる対応を身につけ、チームで駆けつけるなどルールを守ってさえいれば、被災地への負担も最小限に抑えられると話した。一方、自治体側もどういうニーズがあるのか、もっと発信しないといけないと注文した。

 関連死に関しては懸念を示した。過去の大災害の例から、今後も増えることが予想される。しかし、能登半島では「人のつながりがズタズタに切れている」という。被災が影響して亡くなったこと自体がつかめなくなったら「関連死が見えなくなる」と警鐘を鳴らした。

 被災住宅の迅速な調査、観光事業の促進、被災地域全体の一時避難……。室﨑さんのこれまでの経験に裏打ちされた、こうした提言は、復興を進める能登半島の人々だけでなく、災害に備える全国の自治体などの道しるべにもなると強く感じた。


ゲスト / Guest

  • 室﨑益輝 / Yoshiteru MUROSAKI

    神戸大学名誉教授

研究テーマ:能登半島地震

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