2024年02月21日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(8) 徳地立人・元中信証券董事総経理

会見メモ

アジア・パシフィック・イニシアティブのシニアフェローの徳地立人さんが登壇。

深刻な不動産不況で低迷する中国経済の実像について、中国の中の視点から話した。

徳地さんは、大和証券で主に米国、香港、北京、シンガポールで国際投資銀行業務に従事。2002年に中国の大手証券会社、中信証券に移り、2015年に退任するまで董事総経理を務めた。

小学校6年生だった1964年から13年間を北京で過ごし、文化大革命も経験している。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

中国、低迷の長期化か、脱却か

大辺 暢 (日本経済新聞社編集委員)

 「失われた30年」から日本がようやく脱却しようという時に、隣国の中国では長期低迷への懸念が高まっている。

 急成長していた日本が長期の低迷に陥った様子を、欧米のエコノミストは、説明困難な「日本化」と名付けた。「日本化」をいかに避けるか、研究が続けられた。それにも関わらず、同じ「過ち」が中国で繰り返されようとしている。中国の大手証券会社の幹部として、同国経済を内側から眺めてきた徳地氏は、「中国の国民が自分たちの経済に自信を持っていない」と分析する。その結果、人材や資本の流出、消費抑制、出生率低迷といった負のサイクルに陥り、低成長から抜け出せなくなってしまうリスクが高まりつつある。

 中国が日本に例えられる理由の一つは、不良債権問題と経済の低成長が、同時に発生しているためだ。地価上昇は頭打ちしつつあるとは言え、住宅価格は上海で年収の50倍、深圳で40倍超と高止まりしている。一方、人口減少で住宅需要は急速な減少が見込まれ、「不動産市場の状況はまだ底が見えていない」という。

 不良債権問題は過去にもあった。ただ、これまでは高成長により問題を吸収してきた。今はどうか。米中摩擦の激化で外国からの技術獲得は困難だ。海外からの直接投資も冷え込んでいる。そして「豊富な人材もいるが、その人材が流失していたり、アメリカと違って外の優秀な移民を中国に入れることがそう簡単ではない」と徳地氏は指摘する。得意の製造業を守れるのか、不透明な状況だ。

 こうした状況は、先進国入りする前に起きてしまった。「バブルの規模があまりにも大きい。貧富の差の問題もある。日本よりも厳しくなることは十分考えられる」と徳地氏は予測する。

 昨年、中国に出かけて現地の人と議論した際に、「『日本化で終わればいいね』という話がある。ラテンアメリカ系になるんじゃないか」との声が聞かれたという。日本は債務は大きかったが、社会は安定していた。このまま中国が対応できないと、そうはいかない。


ゲスト / Guest

  • 徳地立人 / Tatsuhito TOKUCHI

    元中信証券董事総経理 / Former General Manager of CITIC Securities

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:8

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