2024年02月14日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「働く人材クライシス」(1) 鶴田浩久・国土交通省物流・自動車局長

会見メモ

4月からドライバーなどの時間外労働への規制が強化される「2024年問題」を目前に控え、運輸や物流業界などは対応に追われている。

シリーズ「働く人材クライシス」の初回ゲストとして、国土交通省物流・自動車局の鶴田浩久局長が登壇。政府としてどのような対応を進めているのか、現状と課題などについて話した。

 

司会 今井純子 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

物流停滞「魔法のつえない」

川村 豊 (時事通信社経済部長)

 長時間労働を是正する働き方改革関連法の適用に伴い、トラックドライバーが不足して物流の停滞が懸念される「物流の2024年問題」。国土交通省の鶴田浩久物流・自動車局長は、問題の克服に「魔法のつえはなく、いろんなものを組み合わせてやるしかない」と強調した。

 トラックドライバーは他の産業と比較して労働時間が長い一方で賃金が低く、人手不足が深刻化している。今年4月から適用される時間外労働の上限規制は、こういった物流産業を魅力ある職業とするために不可欠な取り組みだが、これにより懸念されるのが、労働時間の減少による物流の停滞。国の試算では、具体的な対応を行わなかった場合には30年度に輸送能力が34%不足するとの厳しい見方が示されている。

 鶴田局長が会見で繰り返したのは、「物流は国民生活や経済を支える社会インフラ」という点。国が昨年10月にまとめた「物流革新緊急パッケージ」には、緊急に取り組むべき項目として、荷待ち時間の短縮や物流拠点の自動化・機能強化、鉄道や船舶による輸送へのモーダルシフトの推進などがズラリと並んでいる。どれも一朝一夕に実現できるものではないが、「できるところから進める」と鶴田局長。「しっかりした取り組みを続ければ、輸送力不足は補える」と力を込めた。

 そのために鶴田局長は「荷主企業と物流事業者、一般消費者が協力して『三方良し』としなければいけない」と強調した。中でも一般消費者については、「着荷主である小売業者も強く出ることができず、電子商取引では着荷主の立場にある。サプライチェーンの最後が消費者だ」と指摘。再配達とならないようにするなど、個人それぞれがこの問題を自分事として捉えるように訴えた。

 何よりも、鶴田局長自身が家族に電子商取引の使い方を注意されたとのこと。物流業界の担い手不足が他人事ではないことに、改めて気づかされる会見だった。


ゲスト / Guest

  • 鶴田浩久 / Hirohisa TSURUTA

    国土交通省物流・自動車局長 / Director-General, Road Transport Bureau, Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

研究テーマ:働く人材クライシス

研究会回数:1

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