2024年01月18日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(5) 倉田徹・立教大学教授

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会見リポート

香港は中国の国際関係のバロメーター

吉岡 みゆき (読売新聞社国際部)

 香港政治研究者の倉田徹・立教大学教授が、反体制活動を取り締まる国家安全維持法(国安法)体制下の香港で、米中対立が国際金融センターとしての地位にどのように影響するのかについて考察した。

 冒頭で倉田氏は、今月行われた台湾総統選を現地で視察したことについて言及した。「注目すべきは、民衆党の柯文哲候補が若者の間で圧倒的な支持を得たこと」と指摘したうえで、「明日、台湾の中国統一や、中国からの独立が実現することはない。まだ起きていないことについて民進党、国民党がやりあっていることに若い人は嫌気がさしている」と説明した。

 中台関係は膠着状態にある一方で、香港は、現在進行形で西側諸国と中国が外交・安全保障で活発に動く場となっているとして、「武器のない戦場だ。今後の香港のゆくえは中国の国際関係のバロメーターになる」と強調した。

 国安法が2020年に施行されて以降、香港では民主派が統治機構から完全に排除され、自治が減退し中央政府(中国政府)の影響力が顕著となっている。経済は国際性を保つものの政治は中国式になっている現状について、倉田氏は「一都市二制度」と表現し、「問題は、これを国際社会がどう見るかだ」と述べた。

 現状の香港経済の自由度に関する見方は、研究機関の間で評価が割れている。米国は、香港政府・中央政府高官に対し個人制裁を科すなどしているが、米ドルと香港ドルのペッグ制を攻撃しないなど制裁に限界があり、「国安法の極端な運用を阻止できていない」との見解を示した。

 2024年には、香港基本法第23条で定められた国家機密窃取などを取り締まる立法が成立する予定だ。「直接的に外国人を標的にした立法になるかもしれない。警戒する必要がある」と訴えた。

 コロナ後の回復が弱い香港経済にとって、今後、①中国経済の低迷②ドルペッグ制に伴う利上げ③米中関係の悪化――が香港にとってどの程度長期的、構造的な問題として続くのかを見ていく必要があるとも指摘した。


ゲスト / Guest

  • 倉田徹 / Toru KURATA

    日本 / Japan

    立教大学教授 / Professor, Rikkyo University

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:5

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