2024年02月05日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「2024年経済見通し」(5) 福本智之・大阪経済大学教授

会見メモ

日本銀行出身で大阪経済大学教授の福本智之さんが、深刻な不動産不況が続く中国経済の現状と見通し、中長期の展望について話した。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

中国経済、現実味を増す「リスクシナリオ」

小川 直樹 (読売新聞社編集委員)

 中国経済はこの先、どうなるのか。

 脅威論から崩壊論、ピークチャイナ論、光明論まで様々な見方があるが、福本氏は、そのいずれにもくみしない。公式統計や各種試算、最近の政策動向をもとに「コロナ禍を経て中国経済の減速ペースが明らかに速まった」様子を浮かび上がらせた。

 根拠として示した各種データや試算類は中国経済を分析するうえで、まず押さえるべき基礎資料となろう。

 特に目を引いたのは、2022年6月出版の自著で示したリスクシナリオが「今のベースラインシナリオになった」と述べたことだ。このシナリオは21~25年の成長率が5.0%、26~30年が3.5%、31年~35年が2.2%になると予想したもの。従前の基本シナリオより0.3~0.9ポイント低い。

 リスクシナリオをベースラインシナリオに変えた最大の理由として挙げたのが不動産問題だ。

 公式統計でも中国の住宅販売面積はこの2年で4割減った。IMFの試算では実質債務超過などの不動産開発会社は3割に迫る。住宅の予約販売が9割の中国では不動産開発会社の経営不安は購入物件が引き渡されないかもしれないという懸念に直結する。不安解消には政府が責任をもって物件を引き渡すような取り組みが欠かせない。だが、中国政府の対策は住宅ローン金利の引き下げといった需要喚起策が中心で効果はほとんど出ていない。

 中国で主な住宅購入層の25~34歳人口が17年頃から減り始め、30年にはピーク時より7000万人も少なくなる構造要因も強調した。人口動態の面からも住宅需要減が予想されるが、抜本的な対策は見えてこない。

 中国が不動産問題の過小評価、先送りを続けたらどうなるか。福本氏は成長率を累計で1.8ポイント下振れさせるとのIMFの最新の試算に「それほど違和感はない」と述べた。

 11月の米大統領選でトランプ前大統領が勝利する「もしトラ」のシナリオも加味すれば、一段の下方リスクへの備えが必要になろう。


ゲスト / Guest

  • 福本智之 / Tomoyuki FUKUMOTO

    日本 / Japan

    大阪経済大学教授 / Professor, Osaka University of Economics

研究テーマ:2024年経済見通し

研究会回数:5

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