2024年01月17日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「2024年経済見通し」(3) 前田栄治・ちばぎん総合研究所社長

会見メモ

元日銀理事でちばぎん総合研究所社長の前田栄治さんが「2024年の経済・物価と金融政策の展望」をテーマに話した。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)


会見リポート

「物価・賃金上げられない呪縛」からの解放

原 真人 (朝日新聞社編集委員)

 2013年春、安倍政権の意を受けて乗り込んできた黒田東彦総裁によって、日本銀行の政策思想は抜本的に塗り替えられた。黒田総裁は異次元緩和政策を打ち出し、「2年で2%インフレを達成する」と国民に対して宣言する。

 当時、日銀のチーフエコノミストである調査統計局長のポストにあった前田氏は意を決して黒田総裁に進言した。「2%達成は難しい」と。だが聞き入れられなかった。

 結果は前田氏の言うとおりに終わった。黒田日銀は10年かけても2%目標を達成できなかったのである。

 その前田氏が、輸入物価の上昇から始まった現在の物価高について「一時的でなく基調的に変化してきている」と見る。「(10年前は)日本全体に物価や賃金を上げられないという呪縛があった。そこからどうやら解放された感がある」

 2%目標の達成が見通せる状況となり、植田日銀も「そう判断する可能性が大きい」と言う。この春にも日銀はマイナス金利解除に動くとの見立てだ。

その際、課題もいろいろある。気になるのは近年の日銀組織が金融引き締めを経験していないことだ。

 バブル崩壊後で日銀が引き締めをしたのは2000年のゼロ金利解除と06年の量的緩和解除の2回だけ。引き締め経験のある日銀スタッフは今ほとんどいない。多くの国民も本格的な金利上昇局面を未体験だ。だから植田日銀は「慎重にゆっくりと正常化を進めるだろう」

 その植田日銀が今、過去四半世紀の金融政策を検証する「多角的レビュー」に取り組んでいる。「異次元緩和には功罪両方がある。両方を示してもらえばいい」と前田氏。

 超緩和がここまで泥沼化した原因は日銀が2%目標を絶対視しすぎたことにある。レビューでは「(望ましい消費者物価を)幅をもって見るべきだという見解が出るといいなと思っている」という。


ゲスト / Guest

  • 前田栄治 / Eiji MAEDA

    ちばぎん総合研究所社長

研究テーマ:2024年経済見通し

研究会回数:3

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