2016年12月16日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「チェンジ・メーカーズに聞く」⑬四家千佳史(しけ・ちかし) コマツ執行役員・スマートコンストラクション推進本部長

会見メモ

ドローンを用いて建設現場の3次元測量データを作成し、効率的な工事を可能にする新モデルの責任者。「人手不足に役立つ。建設業は地方と関係が深いので地方創生にもなる。このサービスはパッケージ化すれば輸出も可能。成長のチャンスがある」

コマツ / スマートコンストラクションについて

 

司会 水野裕司 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

建設会社が問われる自己改革力

水野 裕司 (企画委員 日本経済新聞社論説副委員長)

地方創生や老朽インフラ対策で建設会社の役割は大きい。地場の建設会社は地域経済の主要な担い手のひとつだし、「減災」の観点からも重要な老朽インフラの補修・建て替えは建設会社なしには進まない。

 

しかし建設会社の経営を今、労働力不足という構造的な問題が直撃している。小規模の会社ほど人手不足は深刻だ。建設会社が生産性を高めて経営を安定させることは、社会的な役割をもっと果たしてもらうためにも求められる。

 

支援策として建機メーカーのコマツが考え出したのが、「スマートコンストラクション」というサービスだ。

 

ドローンを飛ばして工事をする現場の3次元測量データをつくり、完成図面との差を自動計算して、施工する区域の範囲や掘削する土の量を正確に把握する。これまでは必要なダンプカーの台数や工事に要する日数が、工事が進むなかで最初の見込み通りにいかなくなることが当たり前だったが、それらを正確に割り出せるため工事を効率的に進められるようになる。建設会社にとっては朗報だ。

 

スマートコンストラクションがこれからどのように進化するかも映像で紹介された。興味深かったのは人工知能(AI)の活用だ。コマツは建機にセンサーを取り付け、掘削などの動作をデータ化してきている。そうしたビッグデータをもとにAIが、スムーズな掘削のために、建機の操作者に「バケット(土をすくい取る部分)を3度浅く入れるといい」などとアドバイスする。生産性の向上にAIがどんな場面で役立つか、イメージが湧く会見でもあった。

 

スマートコンストラクションを推進するにあたり、コマツの社内でも壁はある。ものづくりの文化が定着しているところへサービスのビジネスモデルを根づかせる苦労も、四家氏の話にはにじんだ。

 

建設会社も頭の切り替えを迫られる。IT(情報技術)をフルに使った仕事の進め方はこれまでの建設業になかったものだ。コストの削減など生産性向上の成果をコマツが数字で見えるようにすることが欠かせないが、中小規模の建設会社に、自ら経営改革に踏み出す気概があるかも問われている。


ゲスト / Guest

  • 四家千佳史 / Chikashi Shike

    日本 / Japan

    コマツ執行役員・スマートコンストラクション推進本部長 / President, Smart Construction Promotion Division Chairman, Komatsu Rental Ltd.

研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く

研究会回数:13

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