2016年12月08日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「2025年問題 現状と展望-柏プロジェクトからの発信」 辻哲夫 元厚労事務次官

会見メモ

「団塊の世代」が後期高齢者となる2025年問題の解決には「高齢で弱っても安心できる在宅ケア政策の徹底しかない」。「在宅医療が贅沢なのはシステムがないから。10年以内にシステムを作れるかどうかが勝負」。柏市の実例を挙げ地域包括ケアの必要性を訴えた。

 

司会 梶本章 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞出身)


会見リポート

地域包括ケア確立、残された時間は少ない

梶本 章 (企画委員 朝日新聞出身)

「2025年問題」といっても、ご存じの方は少ないかもしれない。約700万人の団塊の世代が、9年後の2025年には75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護のニーズがグンと増える。だが、経済の低迷や厳しい財政が続く中、果たして高齢者が安心して生活できるのか……という問題だ。

 

「大都市部の急速な高齢化は、未知の経験。乗り切っていくためにはイノベーションが必要」という東大高齢社会総合研究機構特任教授の辻哲夫さんは、厚労省時代からこのテーマを追究してきた。退官後は千葉県・柏市の団地で、地域包括ケアの理念に基づく実験プロジェクトを展開している。

 

在宅医療や看護、介護の連携を確立し、住まいや生活支援、予防などと組み合わせ、弱っても安心して住み続けられる地域作りが唯一の解決策、と辻さんは言う。市と地区医師会が中心となり、多職種の顔の見える関係もできつつある。

 

こうした様々なサービスが地域で利用できれば、最期まで在宅で暮らせるのかもしれない。ただ、他の地域が果たして柏レベルまで行き着けるのかどうか。一本道ではない。辻さんも「残された時間は少ない。この数年の頑張りがカギ」と強調する。

 

プロジェクトと並行して高齢者の元気を維持する予防策の研究も進んでいる。生活習慣病を防ぐには「1に運動、2に食事、最後にクスリ」というが、加えてフレイル(虚弱)予防も重要。その防止には社会性を落とさないこと、つまり一緒に食事をしたり、互いにつながりを持つことが大事であることも分かってきたという。そのために柏では高齢者のコミュニティー作りにも取り組んでいる。

 

当クラブの9階ラウンジには毎日、OBの方が訪れ、会見に出て積極的に質問されている。そうしたことが実に非常に大事であることも教えられたような気がする。


ゲスト / Guest

  • 辻哲夫 / Tetsuo Tsuji

    日本 / Japan

    元厚労事務次官 / Former Vice Minister of Health, Labour and Welfare

研究テーマ:2025年問題 現状と展望-柏プロジェクトからの発信

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