2016年12月05日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「朴槿恵大統領が辞意—大揺れの韓国社会」奥薗秀樹 静岡県立大学准教授

会見メモ

記者出身の韓国政治研究者。「不動の保守層が存在し、野党の団結にも不安がある。朴大統領は任期満了はあきらめたが、保守再編で中道保守政権に引き継ぐことを狙っているのでは」「憲法裁判所は国民の信頼が厚いだけに世論に押され早く結論を出すかも」

会見は弾劾可決前の12月5日に行われた。

 

司会 山本勇二 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

韓国大統領弾劾 国民の怒り、どこへ

阪堂 博之 (共同通信社国際局)

韓国が大揺れに揺れている。朴槿恵(パククネ)大統領に対する退陣要求集会は拡大の一途をたどり、国会では弾劾訴追案が可決された。1987年の民主化以降、最大となった混乱の背景や今後の見通しなどを記者出身の研究者らしく、わかりやすく解き明かしてみせた。

 

日本の読者や視聴者が最も知りたいのは「韓国民は何をそんなに怒っているのか?」という点だろう。それは朴槿恵氏に「だまされた」「裏切られた」という国民の深い失望だとし、4つの点から分析した。

 

まず、自分たちの選んだ大統領が「得体の知れない人物」に操られていたという衝撃。次に「信頼」「約束」を強調していた「特別な存在」の女性政治家に「だまされた」という衝撃。さらに、父の朴正熙(パクチョンヒ)元大統領の支持層からは「この国に泥を塗りやがって」「許せん」という怒り。そして「民主化から30年たっても、この程度の政治か」「恥ずかしい」という思い、なのだという。

 

今後の焦点は憲法裁判所の審理と特別検察官の捜査の行方だが、韓国の司法は「独裁政権下で権力の道具となってきた反省から、国民の側に立たねばならないという意識が強い」。特にその傾向が強い憲法裁は「国民世論に押される形で」弾劾可決後180日間以内とされている審査期間よりも早く審理を終えて「結論を出す可能性は十分ある」との見方を示した。

 

今回の事態が政界再編につながるという指摘は重要だ。弾劾訴追案には与党セヌリ党の半数が賛成したとみられるが、与党の非主流派と野党などが大統領選に向けて合従連衡するのではないかと予測した。そして、実際に激しい動きが始まった。

 

今後の政局を占うカギの1つは、今回、国民の行動によって示された「反既成政治」という意識の高まりだろう。米国や欧州に広がる「反既成政治」という世界的潮流に韓国も巻き込まれていくのか。「民意」はまたも政治を動かすのか。やむ気配のない抗議行動はそのことを暗示しているのかもしれない。韓国の行方は、なお予断を許さない。


ゲスト / Guest

  • 奥薗秀樹 / Hideki Okuzono

    日本 / Japan

    静岡県立大学准教授 / Associate Professor, University of Shizuoka

研究テーマ:朴槿恵大統領が辞意—大揺れの韓国社会

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