2016年12月07日 15:00 〜 17:30 10階ホール
北欧のいま 5カ国駐日大使に聞く

会見メモ

5人の駐日大使が一堂に会した会見はクラブ史上初めて。まず各大使が、女性の社会進出、教育、エネルギー、IT、報道の自由などのテーマでスピーチ。続いて、難民問題、英国のEU離脱、対ロ関係などについての質問に丁寧に答えた。5カ国の強い連帯と自国へのプライド。5大使の知性とユーモアが強く印象に残る異色の会見となった。会見後、5カ国大使館から提供されたお菓子やドリンクを楽しむレセプションも行われた。

 

左からマグヌス・ローバック(Magnus Robach)スウェーデン大使、アーリン・リーメスタ(Erling Rimestad)ノルウェー大使、ハンネス・ヘイミソン(Hannes HEIMISSON)アイスランド大使、ユッカ・シウコサーリ(Jukka Siukosaari)フィンランド大使、フレディ・スヴェイネ(Freddy Svane)デンマーク大使

 

司会 西村陽一 日本記者クラブ企画委員長(朝日新聞)

通訳 池田薫、宇尾真理子(サイマル・インターナショナル)

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スウェーデン大使館 / ノルウェー大使館 / アイスランド大使館 / フィンランド大使館 / デンマーク大使館 


会見リポート

共通課題と各国の事情を理解

脇 祐三 (企画委員 日本経済新聞社コラムニスト)

同じ地域の国々の駐日大使が集まり、各国それぞれの事情と共通の課題について語る――日本記者クラブの新たな試みである「北欧5カ国大使会見」は、欧州の現状理解に役立つ話が多く、各国大使がユーモアと機知も競い合う興味深い会見であった。

 

冒頭の各大使のプレゼンテーションが、それぞれ中心となるテーマを定めていて、総花的なお国の紹介ではなかったのが良い。デンマークはジェンダー間の平等と女性の役割を重視する社会の歩み、フィンランドは教員の裁量が大きい教育制度の効果、アイスランドは島国の特性と再生可能エネルギー、ノルウェーは産油国が水素利用でめざす地球温暖化対策、スウェーデンは情報公開と報道の自由の歴史。大使の話は各国の社会の変化と今後の目標をうまく伝えていた。

 

日本でも、北欧が女性の社会進出が進んだ地域であることは知られている。それでも、上場企業の役員の4割という枠を定めたノルウェーと、能力次第にして枠を設けなくても女性管理職の比率が高まったデンマークの違いなど、あらためて認識できた話も少なくない。

 

外交・安全保障では、ロシアとの距離感や、トランプ氏が次期大統領になる米国と欧州の関係が焦点になった。北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないフィンランドやスウェーデンで、将来の選択肢としてNATO加盟の議論が活発になっていること。各国とも国防予算を増やす傾向にある半面で、ロシアとの協力関係も注意深く保とうとしていること。日本のメディアの記者が常駐していない国々の現在の機微がよくわかった。

 

難民受け入れの現状や、排外主義的なポピュリズム政党の台頭などについて、現役の記者の質問も活発だった。会見後のレセプションに多くの人が集い、各国の大使や大使館員を囲んで熱心に意見を交換していたのも印象的だ。


ゲスト / Guest

  • フレディ・スヴェイネ デンマーク大使/ユッカ・シウコサーリ フィンランド大使/ハンネス・ヘイミソン アイスランド大使/アーリン・リーメスタ ノルウェー大使/マグヌス・ローバック スウェーデン大使

    デンマーク/フィンランド/アイスランド/ノルウェー/スウェーデン

    駐日大使

研究テーマ:北欧のいま

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