2016年12月05日 11:30 〜 13:00 10階ホール
坂口正芳 警察庁長官 昼食会

会見メモ

2016年8月に就任。録音録画による取り調べ、通信傍受などの新制度から暴力団対策まで広範囲に現状を語った。相模原事件での被害者の匿名発表には「報道の社会的役割は理解している。匿名の場合はその必要性を報道機関に説明することが重要」と述べた。

 

司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

適正な捜査の徹底 「柔和」な長官が秘めた決意に期待

坂口 祐一 (日本経済新聞社編集委員兼論説委員)

飾らない、腰が低い、穏やか――。8月に長官に就任した際、各紙が「ひと」欄で報じた通りの口調と表情で、最近の治安情勢について解説した。

 

警察が抱える課題は、東京五輪に向けたテロ対策から高齢者の交通事故防止まで、なにしろ幅広い。時間の制限もあって、歴代、長官の会見は用意された資料に沿った「概説」になりがちだが、この日はその中にあった「捜査管理の徹底」に目を引かれた。

 

坂口氏は、大分県警が選挙違反取り締まりのため無断で隠しカメラを設置していた問題を取り上げ、「ショッキングな事案。カメラを安易に使えば、捜査全体を崩しかねない」と危機感を表した。

 

カメラに限らず、携帯電話の通信履歴やビッグデータの解析など、「IT(情報技術)捜査」は現代の警察にとって欠かせない武器になっている。一方で捜査現場には、それを過信したり、ずさんに取り扱ったりする危うさも漂う。坂口氏はあえてこの不祥事を会見のテーマの1つとして掲げた。捜査適正化への強い決意の表れと受け止め、期待したい。

 

会場からの質問に対しては、安全運転でやんわりと収めた印象。事件の被害者や容疑者を匿名で発表するケースが相次いだことについても、「警察とマスコミの相互理解が重要」と述べるにとどめた。

 

柔和なたたずまいとは裏腹に、「戦略を立て、腹を据えて大胆・巧妙に攻める。周りがそのすごみに気が付かないだけ」という人物評も聞く。次の機会にはぜひ、交通畑に明るい長官の私見を交え、「自動運転への期待と懸念」といったテーマで踏み込んだ話を聞いてみたい。

 

クラブがお願いした揮毫(きごう)に、「一期一会」と記した。「転勤、異動の激しい警察人生」を送り、つねにその時々の出会いや縁(えにし)を大切にしてきたという。その結果、「年末のこの時期には1000枚の年賀状を書かなくてはならないので頭が痛いのですが……」と、会場を笑わせた。


ゲスト / Guest

  • 坂口正芳 / Masayoshi Sakaguchi

    日本 / Japan

    警察庁長官 / Commissioner, National Police Agency

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