2016年11月25日 15:30 〜 16:30 10階ホール
ビロル 国際エネルギー機関(IEA)事務局長 会見

会見メモ

「今後の勝者は天然ガスと再生可能エネルギー。一方で石油の消費も伸び続ける。なぜならトラック燃料、航空燃料、石油化学は石油の代替物がみつからないから」「国際的なエネルギー連携は経済面だけでなく外交面からの考慮も必要。一国依存は危険」

 

司会 脇祐三 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

温暖化対策「大幅に加速を」、トランプ次期米政権に警戒感

村山 祐介 (朝日新聞社GLOBE編集部)

地球温暖化対策のパリ協定から離脱する意向を示していたトランプ氏の米大統領選勝利で、環境エネルギー分野でも先行きに不透明感が漂っている。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は会見で、「各国政府が行動をとらなければ、心の準備が必要だ。世界は今と全く違う様相になるだろう」と述べ、温暖化対策の遅滞に伴う代償の大きさを訴え、強く警鐘を鳴らした。

 

協定は、産業革命前からの平均気温上昇を2度未満に抑える目標を掲げている。ビロル氏は、世界の温室効果ガス排出量の3分の2を占めるエネルギー部門にその成否がかかるとしたうえで、現状では、各国の削減目標がすべて達成されても「まだ2.7度上昇する」と指摘。「道筋からはるかに離れている。各国がかなり大幅に努力を加速しないと実現できない」と強調した。

 

トランプ次期政権の政策については「米国にとどまらず全世界に影響を及ぼす」と警戒感をにじませつつも、現時点では「時期尚早で、はかりがたい」と述べるにとどめた。

 

ビロル氏はまた、IEAが発表したばかりの16年版「世界エネルギー見通し」をもとに、2040年までの各エネルギーの展望を語った。過去25年間で「最大の勝ち組」だった石炭の消費が鈍化し、次の25年間は、太陽と風力を中心とした再生可能エネルギーと天然ガスに「勝ち組」が変わるとの見方を示した。

 

再生エネは費用対効果の向上でとりわけ発電部門で浸透が進み、「かなりの成功物語が見られた」と指摘。中国を「再生エネのチャンピオン」と評した。天然ガスでは、米国や豪州などから大量の液化天然ガス(LNG)が市場に供給されることで、シェールガス革命に続く「第2次革命」が起きる可能性に触れた。

 

一方、石油と石炭は、需要は増えるものの、その伸びは鈍化するとの見通しを示した。


ゲスト / Guest

  • ファティ・ビロル / Fatih BIROL

    国際エネルギー機関(IEA)事務局長 / Executive Director, International Energy Agency (IEA)

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