2016年11月16日 11:00 〜 12:00 10階ホール
横田耕一 九州大学名誉教授. 研究会「生前退位を考える」①

会見メモ

天皇を研究対象にする憲法学者。「退位問題は天皇の意思で政治が動いており憲法的には大問題。天皇の意思を忖度して政府が主導すべきだった」。「国事行為でも私的行為でもない公的行為を広く認めすぎる。被災地訪問は公務ではなく私的行為で行くのがよい」
司会 傍示文昭 日本記者クラブ企画委員(西日本新聞)


会見リポート

公的行為めぐる憲法学説に通説なし

橋詰 悦荘 (時事通信社編集局次長)

この夏、衝撃を呼び起こした天皇退位問題。象徴天皇制を、憲法を通して長年研究してきた横田耕一九州大学名誉教授が自らの学説の中核部分を語った。

 

冒頭、横田氏が断ったのは、天皇制を議論する際の配意すべき点。「既にそれぞれの人が天皇制に対するイメージを持つ。それを基に議論することが多い。私は条文に即して象徴を考える。現在の天皇は2代目」。明解なスタンスだ。

 

大日本帝国憲法の天皇制と日本国憲法の天皇制の関係は、断絶説と連続説に分かれている。横田氏は断絶説を支持。ただ、戦後の天皇制の現実は、現憲法と矛盾するものを引いて伝統・慣行の継続があるとする連続説に沿って運用されてきた。

 

10月にスタートした「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」。会議名が示す通り、公務の負担軽減が議論のスタート地点に置かれている。問題はその公務の中でも平成に入り増えた「公的行為」(8月8日のお言葉の中では象徴的行為)が、そもそも憲法上どう位置付けられているか、ということ。結論は「公的行為をめぐる憲法学説に通説はない」。

 

清宮四郎「象徴としての行為」説、佐藤幸治「公人としての行為」説、渋谷秀樹「準国事行為」説、宮沢俊義「国事行為」説。政府見解は「憲法上の明文の根拠はないが、象徴たる地位にある天皇の行為として当然認められる」だが、横田説は「違憲」。

 

公的行為を認めた場合、①範囲・責任の所在が不明確②内閣による政治利用③天皇の意思介在で天皇が政治的機能を果たす―の懸念があることを指摘。横田説は国事行為と私的行為の中間部分を認めない。

 

厳格な解釈であるが、膨れ上がった平成の公的行為を議論するには実際的ではない。8・8お言葉、それを受けての有識者会議。横田説に基づけば、その展開そのものが、違憲となる。難題が潜んでいた。


ゲスト / Guest

  • 横田耕一 / Kouichi Yokota

    日本 / Japan

    九州大学名誉教授 / professor emeritus of Kyushu University

研究テーマ:生前退位を考える

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