2016年11月14日 14:00 〜 15:30 10階ホール
平岩俊司 関西学院大学教授 シリーズ企画「北朝鮮の核とミサイル」③

会見メモ

北朝鮮ウォッチャー。「核開発はもはや交渉カードではない。核保有前提の『現状凍結』を交渉材料にしたがっている」「オバマの戦略的忍耐で北朝鮮は米国を怖がらなくなり、その結果、安保面での対中依存度も低下した」「体制崩壊目前の観測は非現実的」
司会 山本勇二 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

期待ではなく現実を直視せよ

出石 直 (NHK解説委員)

今年5月の党大会で北朝鮮は、核開発を恒久的に堅持すべき戦略的路線と位置づけた。核実験を重ねることによって核戦力の質的・量的強化を図っている。

 

「異なる次元」の脅威となった北朝鮮の核ミサイル問題に国際社会はどう向き合っていけば良いのか。「北朝鮮にとって核ミサイルは、もはや交渉カードではなくなった」と平岩教授は指摘する。核保有そのものが目的化しているというのだ。

 

物理的な強制力の行使も辞さずレジームチェンジ(体制崩壊)をめざす強硬論と、核保有を認め現状凍結を図る妥協策。そのどちらでもない第3の選択肢が中国の役割に期待する方策だが「中国の影響力にも限界がある」と指摘する。オバマ政権の戦略的忍耐はアメリカの脅威を低下させ、北朝鮮にとって“中国の言うことを聞かなくても良い”という状況を作り出した。中国東北部と北朝鮮とは経済的に相互依存関係にあり、中央政府の指示はなかなか地方にまで浸透しない。

 

中国政府は、平和協定の締結と核放棄を同時並行的に協議しようというツートラックアプローチを提唱している。トランプ政権がこの提案に乗るかどうかは不明だが、クリントン政権からブッシュ政権になって融和路線から強硬路線に転じた前例もあり、アメリカの対北朝鮮政策が大きく変化する可能性もある、という。北朝鮮と関係のある中国企業を制裁対象に加える新たなアプローチにも期待を示した。

 

“北朝鮮はいずれ崩壊するだろう““若い指導者の思いつきに過ぎない”。情報が限られている国だけに、北朝鮮の行動はとかく安易に説明されがちだ。予測が難しい相手だからこそ “こうであってほしい”という願望ではなく、北朝鮮なりの論理や現実を直視して対応策を考えていくべきだというのが、われわれメディアに対する平岩教授のメッセージだったように思う。


ゲスト / Guest

  • 平岩俊司 / Shunji Hiraiwa

    日本 / Japan

    関西学院大学教授 / Professor, Kwansei Gakuin University

研究テーマ:北朝鮮の核とミサイル

研究会回数:0

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