2016年11月16日 13:30 〜 15:00 10階ホール
髙見澤將林 前内閣官房副長官補 (事態対処・危機管理担当)「変わるアメリカ 変わらないアメリカ 米大統領選」15

会見メモ

安倍官邸で安保政策を立案した防衛官僚。トランプ政権との関係を理論的に語った。キーワードの一つはパッション(情熱)。「大統領個人の思い入れがあっても国際的には受け入れられない政策について、どう調和を図り顔を立てるか」
司会 島田敏男 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

トランプで変わる点 変わらぬ点

トランプ当選直後のシリーズ。しかも、渡部恒雄、髙見澤將林という得難い2講師に関心は高かった。

 

渡部氏は、自らはヒラリーが逃げ切ると予測していたと率直に告白、最終局面で民主党側の運動員の足が止まったのではないか、と玄人見立てを披露した。「トランプ周辺も勝ってうれしそうではなかった」との観察も付け加えた。選挙戦をビジネスに利用してきたトランプ陣営に、当選は果たして本当の意味での勝利だったのか、という疑問だ。今後、大統領という公職と私的ビジネスとの間で利益相反が起きないか、という指摘もナルホドと思った。本当は大統領になりたくなかった。もう一歩で大統領になれたビジネスマンでいたかった。それが実は真相ではないか、と私は楽しく想像してしまった。

 

それはそれ。トランプ新体制はいかに。渡部氏は、反目してきた共和党本流とどう協調するかがキーになると言う。3000人の政治任用が入れ替わる米国で、しかも議会承認ポストが多いだけに本流人脈も使わないと人材登用もままならない、とのことだった。その後の動きを見ると氏の予想通り、人事ではそれなりの妥協路線に入ったとの印象である。

 

髙見澤氏は、民主主義的選挙プロセスにおける世界的な現象として、①政治の困難化②価値の動揺③格差の増大④情報の拡散⑤内政の重視、という5つの特徴があるとして、米大統領選を緻密な理論で整理してくれた。わかりやすかったのは、オバマ政権との比較だ。オバマが個別安保問題では口先介入のみに留め実力行使を控え、気候変動などの国際的共通課題の解決には積極的だったのに比べ、トランプ新体制は、むしろその逆をいくのではないか、と言う。

 

そして、一度米国抜きの国際システムというものを考えて、米国の価値を捉え直してはどうか、と。興味深い問題提起だ。やはり「米国しかいない」となるのか。中国がそれに取って代わる役割を果たせるのか。髙見澤氏と言えば、安倍政権の官房副長官補(7月に退任)として安保法制を仕切っていた人だ。トランプ誕生で新法制の運用がどう変わるか。これまた聞き落としてしまった。

 

企画委員 毎日新聞社専門編集委員 倉重 篤郎

 

(このリポートは11月14日開催の渡部恒雄氏会見との統合版です)


ゲスト / Guest

  • 髙見澤將林 / Nobushige Takamizawa

    日本 / Japan

    前内閣官房副長官補 (事態対処・危機管理担当) / Former President, The National Institute for Defense Studies (NID)

研究テーマ:変わるアメリカ 変わらないアメリカ 米大統領選

研究会回数:15

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