2016年11月09日 13:00 〜 14:00 10階ホール
イグ・ノーベル賞受賞 東山篤規 立命館大学教授

会見メモ

出席者みんなで股のぞきを実行した。役に立ちますか、との質問に「何の役にも立ちません。立たなくてもいい。見ている世界が身体とどう関係するのか好奇心だけ」と言い切る。「自分にとって面白いことを伝えるために修業している。よく遊びよく学べ、です」
司会 安井孝之 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

面白いことで「よく遊び、よく学べ」

安井 孝之 (企画委員 朝日新聞社編集委員)

会見出席者に「股のぞき」を促し、多くの人が股から見える様子の妙を体験した。普通の姿勢で見るよりも、奥行き感が少なくなり、遠くのものが小さく見える 、という。ところが残念なことに私は実感できなかった。東山さんによると、個人差があるらしい。

 

海外の研究者が指摘していた現象を、30人の大学生に股のぞきの実験をさせ、ちゃんとしたデータで確かめてみせた。それがイグノーベル賞の受賞につながった。

 

大の大人が股から見える世界をあれこれ議論するというけったいな話なのだが、次々に実験結果を示すグラフを見せられると、なるほど真面目な研究だと思えるのだから、不思議なものである。

 

心理学を勉強したいと文学部に入り、実験心理学を修めた。学生時代に錯視という現象を「面白いなあ」と感じたことがその後の人生を決めた。普通に立って、塔など高いものを見ると、人は実際の高さより高く感じるという。それが錯視。ところが寝転がると、見え方がまた違う。

 

「面白いでしょう」と東山さんは言うのだが、若い頃なら他にももっと面白いことがあったんじゃないかと内心思ったが、「人それぞれに判断基準がありますから」と、やんわりかわされた。そりゃそうだ。みんなが同じものに面白いと感じるようになったら、この世はいささか危険である。多様性があればこそのこの世の面白さである。

 

股のぞきの研究を「役に立ちません」ときっぱり。「役に立つ研究」を迫る風潮があるが、役に立つ、立たないという判断基準は一律であろうはずはない。

 

「股のぞきの研究は、面白いなあと人々を喜ばせています。その点は役に立ってます」。なるほど、いろんな役立ち方があるわけだ。「よく遊び、よく学べ」と揮ごう。知的好奇心は、まず「学べ」からは生まれない、という思いを込めた。


ゲスト / Guest

  • 東山篤規 / Atsuki Higashiyama

    日本 / Japan

    立命館大学教授 / Professor, Ritsumeikan University

研究テーマ:イグ・ノーベル賞受賞

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