2016年11月02日 11:00 〜 12:30 10階ホール
須田美矢子 キヤノングローバル戦略研究所特別顧問 「<日銀検証>を検証する」③

会見メモ

日銀政策委審議委員を10年務めた経歴を持つ。「今の金融緩和は行き過ぎ」「政治任用で日銀審議委員は似た人ばかり」「審議委員には実体経済で実績ある人が必要」「次期総裁は政府と適正な距離が取れる政治力が必要」。今の日銀に対し、辛口コメントが続いた。
司会 福本容子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

異次元緩和の行き詰まりは「想定通り」

福本 容子 (企画委員 毎日新聞社論説委員)

日銀の説明は「納得がいかなかった」――。9月に日銀が公表した「総括的な検証」を検証するシリーズ第3弾に登場した元日銀審議委員の須田美矢子さんは、物価上昇目標2%がいまだ実現できていないことを「全てひとのせいにした」日銀の説明に、異議を唱えた。

 

想定外の原油価格下落や長期化した消費増税の影響、そこに、もともと日本人にしみついていた物価予想のクセが作用し、うまくいかなかった。これが日銀による検証の大まかな結論だ。

 

これに対し、須田さんは手厳しい。日本人の物価予想がそう簡単に上がらないことは、自らが政策委員だった当時(2001~2011年)からわかっていたことであり、異次元緩和が行き詰まったのは「想定通り」だと言う。

 

黒田日銀は2013年4月にバズーカ砲と例えられた大規模な量的緩和を始めた。しかし、それ以前から、日本の金融政策はすでに十分緩和状態にあり、どれほど派手に追加策を投じても限界は見えていた、との指摘だ。

 

では、なぜ日本の物価上昇率が上がらないのか。須田さんはまず、アベノミクスの中で頻繁に登場する「デフレマインド(心理)」の存在そのものを否定。将来物価が「下がる」と予想する人より、「上がる」と見る人が多い歴史的傾向に触れた。

 

そのうえで、成長期待がないこと、将来への不安、閉塞感が問題なのであって、構造改革により成長期待を引き上げ、財政再建で主に社会保障面での将来不安を取り除くことこそ重要な処方箋になると訴えた。

 

須田さんは、政策委員会のあり方や政府との距離についても注文した。日銀内外で尊敬されるプロたちが多様な意見を戦わせることで、判断が大きく間違うのを防ぐのが委員会制度の最大のメリットだと指摘。政府と一定の距離を保つうえでは、日銀総裁に政治力が必要だと述べていたのが印象的だった。日銀としてやりたいことを政府にきちんと説明できる人でなくてはならない、ということである。


ゲスト / Guest

  • 須田美矢子 / Miyako Suda

    日本 / Japan

    キヤノングローバル戦略研究所特別顧問 / Special Advisor, The Canon Institute for Global Studies

研究テーマ:<日銀検証>を検証する

研究会回数:3

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