2016年10月14日 13:30 〜 14:50 10階ホール
ベルナール・ビゴ ITER機構長 会見

会見メモ

核融合は「未来のエネルギー」として日米EUなどが共同研究を進めている。「南仏で建設中の国際熱核融合実験炉を2025年に本格稼働させ、2060―70年には大型産業用の発電を実用化させたい」「実現すれば、核分裂利用の今の原発よりはるかに優れている」
司会 大牟田透 朝日新聞論説委員
通訳 陰山由賀里(コンベンション・リンケージ)


会見リポート

「地上に太陽を」の挑戦は成功するか

大牟田 透 (朝日新聞社論説委員)

太陽や星々のエネルギー源である核融合を地上で大規模に実験しようというのが、国際熱核融合実験炉(ITER=イーター)だ。日欧の誘致合戦の末に南仏・カダラッシュへの建設が決まり、2007年にITER協定が発効した。建設推進のためにできたのがITER機構だ。

 

昨年3月、3代目の機構長に就いたビゴ氏は仏国立高等師範学校で長く教鞭をとった後、仏原子力・代替エネルギー庁長官を務めた。親しみやすく、また情熱を感じさせる語り口は、その経歴によるところが大きいのだろう。

 

ITERの現状は必ずしも順調ではない。07年時点では10年間で建設を終え、当初は18年、その後の見直しでも20年には実験炉の運転を始める予定だったが、遅れは明らかだった。「機構長に就くと、全体の進捗を見渡せる図がないことに気づいた」と、東京五輪でも聞いたフレーズを口にする。

 

今後必要になる時間や費用を見直して工程表を改定した。組み立て終了・運転開始は5年遅れの25年、フル稼働は8年遅れの35年となる見通しだ。建設期間の延長と組み立て費用の再検討で、35年までの費用は約35%、46億ユーロ(約5200億円)増の180億ユーロ(約2兆500億円)になった。

 

「無駄遣いではないか」と抵抗を強めていた米議会に対しては「今回の見直し費用を上限に、事業を適切に管理する」と宣言。「9%の予算支出で100%の施設利用権が得られる」と軟化を引き出したという。

 

さまざまな対立にもかかわらず、ITERには欧州、日本、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極が参加している。それは核融合が持つ大きな可能性と実現の難しさを示している。ビゴ氏は、核分裂反応による原子力発電と比べて、はるかに安全で放射性廃棄物問題が小さいと強調する。核融合が人類のエネルギー問題を解決する日は来るのだろうか。


ゲスト / Guest

  • ベルナール・ビゴ / Bernard Bigot

    フランス / France

    ITER機構長 / ITER Director-General

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