2016年10月14日 10:30 〜 12:30 10階ホール
中国外交専門家グループ 会見

会見メモ

米中、日中、朝鮮半島情勢、地域経済連携などについてそれぞれの立場から話した。
(左から)金燦榮・中国人民大学国際関係学院副院長
     虞少華・中国国際問題研究院研究員
     王星宇・中国人民大学国際関係学院副教授
司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

日米朝研究者が語る“中国外交のこれから”

石田 耕一郎 (朝日新聞社国際報道部)

急速な経済成長に自信を深め、アジアの「地域大国」から世界の「超大国」を目指す中国。米大統領選や北朝鮮の核実験、南シナ海での領土摩擦など、中国を取り巻く環境が変わりゆくなか、その外交は何を志向し、どこへ向かうのか。日米朝を研究する3人の中国人研究者が解説した。

 

3人はいずれも、政府と良好な関係を保つ「体制内」の研究者で、その発言は政府の公式見解を基礎にする。裏返せば、行間から中国政府の考えを垣間見ることが可能だ。

 

まずスピーチに立ったのは、中米関係が専門の中国人民大学国際関係学院の金燦榮副院長。「国連中心」「内政不干渉」といった中国外交の基本方針を説明しつつ、現在の中国が直面する問題として「台湾との関係」を筆頭に掲げ、「対米関係」「日本を含む周辺国との関係」を列挙した。

 

金氏は今夏に広州であった講演で「2018年に米国との軍事衝突が起きる」と中国国民に警戒を呼びかけた大学教授として、中国では有名人だ。会見でも、日本について、「南シナ海問題の解決は日米の出方にかかっている。中国はすでに強大で、日本は『米国が頼りになる』との考えを捨て、行動を慎重に判断すべきだ」と警告した。

 

続いて、在平壌大使館の外交官だった中国国際問題研究院の虞少華研究員が、対北朝鮮外交を説明した。虞氏は「北朝鮮の核開発をめぐり、中国が核開発を容認したという『中国外交の失敗論』や、核放棄を働きかけていないという『中国の責任論』を指摘する人がいるが、いずれも間違いだ」と主張した。

 

その上で、「北朝鮮核問題の解決は、関係各国の協力が必要だし、対話と圧力が欠かせない」と指摘。「韓国への高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)配備や南シナ海、尖閣諸島など、中国周辺で起こる問題で、中国は常に受動的で、中国の対応が強硬だという指摘は当たらない」とも反論した。

 

最後に、日中関係を専門にする中国人民大学国際関係学院の王星宇副教授が、現在の日中関係について「互いにあり方を模索している時期で落ち着くには10~15年を要する」「現在は対立しても破局はしない関係」と指摘。その上で、「中国政府は一貫して対日関係を重視している。関係改善には、二国間の矛盾を増やさない努力が大事だ。経済協力を含め、バランスの取れた関係を作る必要がある」と呼びかけた。

 

会見には日本や中国、香港などの記者ら55人が参加。質疑応答では米大統領選への見方や中朝関係、尖閣諸島周辺で相次ぐ中国船の航行などに関する質問が出された。


ゲスト / Guest

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